「監督ばんざい」を観る

監督・ばんざい! <同時収録> 素晴らしき休日 [DVD] DVDで観た。たけしの映画を観たのは何年ぶりのことだろう。ある意味ほとんどスルーしてきた。なんかある種の偏見を抱いている部分もあるにはあった。芸人がなに文化人気取りで映像作家の真似事しているんだよみたいな、まあひどい偏見だな。
それでこの映画はというと、様々な映画、監督へのオマージュと、北野武の映画に対する自負の表出「俺はどんなタイプの映画も作れる」、そして自虐と内省、そういうったものに満ち満ちている。映像作家はきっとどこかで一度はこういうタイプの映画を作りたいと思うのかもしれませんな。
でも確実に言うけど、この映画は明らかな失敗作だ。幾つかの面白いエピソード、シーン、北野武とその分身の人形とのやりとりなどの面白さはあるにはある。でもたいていの場合はギャグも空回りしているし、それぞれのエピソードもまた凡庸というか、支離滅裂というか、まあ面白くないのだよ。しいていえば武の映画に対するオマージュ、愛だけはなんとなく伝わってくる。それだけが救いの映画だな。
しかしこういうタイプの映画って、やっぱり生半可に作っちゃいけないのだろうね。たぶん私が知っている限りじゃ、こういう監督の心理、精神を映像化した内省型私映画で成功したのは、おそらくフェリーニくらいだろう。ウッディ・アレンとかも挑戦したけどかなりしんどかったし。そうだトリフォーが「アメリカの夜」でこういうのをやっていたけど、あれは面白かった。やっぱりね、どこかで活動家みたいな職人根性丸出しの部分が必要なんだよな。芸術家かぶれして悩まれても、みたいな感じかな。武は職人的映画監督として成功するタレント性は十分持っているとは思う。でもみんなでよってたかってその芸術性みたいなものを持ち上げちゃったもんだから、本人もなんか勘違いしちゃったんじゃないのではないかと、なんとなくそんな気がしてしまう映画でしたな。しかしこの映画で興収は望めないだろう。
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