「陰日向に咲く」を観る

陰日向に咲く 通常版 [DVD]
http://www.kage-hinata.jp/index.html
DVDで借りてきた。劇団一人のベストセラー小説の映画化。都会で日のあたらない人生を送る9人の人々の一風変わったさして面白くもない生活を淡々と描いていくお話。お話が進むにつれて9人がそれぞれに別の誰かの人生とクロスするという、まあありがちなストーリーでもある。
主演にV6の岡田准一NHK大河ドラマ主演の宮崎あおいといった人気タレントを配している。ベストセラー、人気アイドル主演みたいなことで話題先行型映画というのが観る前の印象だったけど、この映画けっこういける。泣かせどころはきっちり目頭うるうるになったし。起伏のはっきりしたお話じゃなく9人それぞれの生活をけっこう淡々と描いている印象が強い。それでもきちんと見せてくれるのは、それぞれの役者さんの演技力によるのだろうと思う。
岡田准一はジャニーズ系アイドルなんだけど、けっこうしっかりと演技している。絵に描いたようなハンサム、グッドルッキングだけど、どうしてどうしてしっかりとした芝居をしている。今風若者の根無し草みたいな部分をきちんと表現している。パチンコに狂いサラ金の借金で破綻寸前の若者。周囲が善意からいろいろ助けてくれるのにやっぱりパチンコにはまってしまう。そういうどうしようもない若者の破滅一歩手前状態みたいなところを何気に演じてくれる。
パートタイムでプータローしているサラリーマン役は三浦友和。原作よりも少し年のいった役柄になっているのはキャスティングに合わせたということだろうか。しかし三浦友和は本当にいい。三木聡監督作品「転々」でも得体の知れない中年の借金取立てを飄々、淡々と演じていた。あれもものすごく良かったけれど、今回もちょっと同じような雰囲気だしていた。「転々」観ていた時も思ったけれど、いつの間にこんな良い味出す役者に化けたんだろう。ただただ二枚目というだけの大根、百恵ちゃんの旦那さんだった男が渋さや飄々とした軽さとかを演じ分けられるようになった。
それ以外の役者さんは実はあまりよく知らない。宮崎あおいはただひたすら可愛らしい。演技もそれなりにうまい。でも役柄が今ひとつだったかな。漫才師だった母親と、その人生をたどろうと浅草をさまよう娘を一人二役しているのだけど、今ひとつキャラ設定曖昧。ちょっと損をしている。だいたいにおいてこのエピソードはこの映画の中では少しういていて、一番いろいろな意味で無理があったような。まあいいか彼女がかわいかったから。
あまり期待もせず観たのだけどけっこう面白かった。こういう小品と巡りあえることも映画を観るうえでの僥倖の一つだと思う。