大阪屋・栗田出版業務提携

職場で若いのが騒いでいた。早速ぐぐると以下のような記事が日経で出た模様だ。
<大阪屋と栗田出版が提携 物流機能を相互に利用>
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080602AT1D0100801062008.html
それで慌てて業界紙新文化の速報をぐぐると以下のような記事がでていた。

新文化 出版業界紙
大阪屋と栗田、業務提携で合意
5月30日、両社及び両社関連会社が保有する物流・情報システムを相互利用することで基本合意書を取り交わした。集品・保有在庫・客注・輸送面のほか、資材などの共同購入で包括的に提携する。実施は年内を予定。これ以外にも効果が見込まれる案件については継続的に協議していく考えだ。両社は基盤とする取引先の業態や地域分布も異なることから、大きな障害もなく、有益な協力関係の構築が可能であることを確認して合意に至った。【6月2日更新】
【続報】大阪屋と栗田、業務提携
「集品」「保有在庫」「客注」「輸送」「資材の共同購入」の5項目について、それぞれ6〜8人のワーキングチームを結成し、検討に入る。KBC、TBCの在庫300万冊と栗田・ブックサービスの在庫60万冊を相互に共有化するが、具体的な業務やコスト削減額については白紙の状態。ただし、栗田では「まずはブックサービスの配送について、大阪屋の『客注くん』を活用していきたい」と語っている。大阪屋の伊勢久雄執行役員は「できるところから始める」と述べ、両社ともに今後、他の取次会社とも協力関係を結ぶ考えがあることを明らかにした。昨年12月に三好勇治社長と郷田照雄社長で提携における効率化を模索し始めていたという。【6月2日更新】

いよいよもって取次も再編時代に入ったのかという思いをもった。いやそれ以上にこの業界しんどくなってきているのだろう。業界3位と4位の大阪屋、栗田が業務提携をせざるをえない状況になりつつあるということなのだ。
とはいえこの3位と4位、業界大手の日販、トーハンとは大幅に開きがある中堅取次なのである。試みに売り上げを比較してみるとこんな感じだろうか。

日販   売上    6486億5300万(2006/4〜2007/3)連結売上7813億2500万
     営業利益     121億4700万
     経常利益     30億5100万
トーハン 売上        6413億9600万(2006/4〜2007/3)連結売上6450億
     営業利益     116億9800万
     経常利益    60億
大阪屋  売上      1257億4100万円(2006/4〜2007/3)
          営業利益       6億 400万円
         経常利益      3億2400万円
栗田出版 売上       514億
          営業利益       4億2500万円
          経常損失          8000万円

2社の売上足しても日販の3割にも満たない規模なのである。数字だけを見ればこれはもう完全な弱者連合みたいなものかもしれないな。久々に取次の売上をしげしげみるとやっぱり大阪屋はずいぶんとガタイが大きくなったものだとは思った。10数年前であれば栗田とさほど違いない規模だったはずなのだが、今や倍以上の規模になっているわけだ。これはもう完璧にジュンク堂の多店舗展開とアマゾンの売上増大の影響といえるのだろう。まあ誰がみても明らかだ。ただし、営業利益の少なさ(コンマ4%)は、同時にジュンク、アマゾンから取引上相当にむしられている証左なのだろうと想像する。出し正味たたかれてるんだろうな〜というのが感想です。
出版業界自体が年々衰退しつつあるなかでは、業務提携からさらに合併みたいなこともあり得ることなのかもしれないと思う。今回の提携もとにかくできることから共同化してコストを削減したいということなんだろう。ただでさえ現在のガソリンやダンボールの大幅な値上がりは、物流業者としての取次経営を直撃しているはずだ。すでに相当以前から中堅取次は共同物流として返品に関しては業務の共同化が進んでいたから、それをさらに前進させて資材や物流面でも共同化できる部分を探ろうということだ。
しかし一方でこの業界は以前として古い古い体質をもっているし、対版元にしろ対書店にしろ原則取引は個々なわけなので、なかなかドラスティックにはいかないという気がしないでもない。しかし生き残りをかけてとなるとそんな流暢なことはいっていられないだろう。今後も大きな業界再編があるかもしれない。
日販、トーハンともそれぞれ有力出版社が大株主なので、版元の思惑というものが様々に影響を与えている。しかし一方で大手出版社も雑誌やコミックの売上減少によって徐々に力を失いつつあるし、書籍系出版社はだいたいにおいて壊滅的に近い低落傾向にある。こういうご時勢なので生き残りをかけて取次が業務提携や合併まで進んでもなにもおかしくはないだろう。
今後例えばトーハンは例の太洋社や中央社との関係性をより密にすることだってあるやもしれんし、日販が大阪屋や栗田に声かけるなんてことだってあるかもしれない。いずれにしろ他業種との比較から本の物流がとにかく遅い、効率的でないということが日に日に一般ユーザーにも理解されるようになってきている。だからこそアマゾンがどこにいても本や雑誌を手に取ることができるはずの日本でも一定の地位を確保し倍々ゲーム的に売上を伸ばしてきたのだ。
とはいえ物流の機械化、システム化を進めるには、スペース、投資費用、様々な意味で取次一社では限界にきつつあるのかもしれないのだ。いっそのこと日販、トーハン、大阪屋、栗田、太洋社あたりが合体して巨大な出版物流システム作ったらどうなのかね。かっての日配みたいにさ。とりあえず雑誌取次を東と西に分けてみたらどうだろう。東日本雑誌と西日本雑誌みたいにさ。そんなことを思うのは、今の全国津々浦々で同一発売日を守るシステムがそろそろ限界にきつつあるのではとも思うからなんだけど、どうなんだろう。
まあいずれにしても今回の大阪屋と栗田の提携みたいな流れは進んでいくのではと思う。そうでないと、ジャイアント日販、トーハンの下で中堅取次がジリ貧傾向が進むのは目に見えていそうだから。まあ中々変わらないのがこの業界の常でもあるのだけど。