「転々」を観る

転々 プレミアム・エディション [DVD]
映画「転々−てんてん−」オフィシャルサイト
http://journal.mycom.co.jp/articles/2007/10/25/tenten/
三木聡 - Wikipedia
先週の土曜日にDVDを借りてきた。まったく予備知識なしで、三木聡監督ということだけで借りてきた。この監督とオダギリジョーが人気TVドラマ「時効警察」の組み合わせだということも実は知らなかった。三木聡監督は一月くらい前に「亀は意外と速く泳ぐ」を観て初めて知った。この映画も上野樹里主演ということだけで借りてきたのだけど、意外と面白かった。脱力系コメディといのだとか。
こうやって数珠繋ぎのようにして新しい映像作家を知る、新しい映画を観ていくのは楽しい。映画をそれこそ年間100本以上観ていた20代の頃にはこうした数珠繋ぎで新しい監督、役者、脚本家、カメラマンなどを知り、映画的世界が広がった。もうそういうのから、随分と遠ざかっているし、たぶんそういう若さ故の熱狂みたいな情熱はありえないと思う。でも、少しづつでも新しい映画を観ていくのも楽しいことである。実際、ちょっとづつ後追いでもここ数年の映画とかをDVDで借りて観ていくと、けっこう目から鱗みたいなこともある。実際、日本映画は確実に面白くなっていると思う。
それで「転々」である。ユルイ、脱力系であることはまちがいないけど、「亀は意外・・・」とは一種異なったタイプの映画だ。井の頭公園から霞ヶ関までを中年男とさえない大学生の二人連れで散歩するお話。ロード・ムービーであり、一歩通りからはずれると意外な様相を見せる東京という街の多様性とか趣とか、まあそういうものも描かれている。最後は擬似家族のホノボノとして風情とかもあり、シミジミとさせる。個人的にはどことなく小津映画みたいな雰囲気も感じられたりした。
ドラマとしては最後に大きく動きそうでいて、結局拍子抜けするくらいに実はなにも起きない。ある種の肩透かしみたいなラストまで、ある意味では徹底して脱力系だとは思う。
役者さんについて。オダギリジョーという若い役者さんはうまい。実にうまい。ただどことなくいつも同じキャラクターを演じているような部分もある。ひょひょうとしたキャラが際立ちすぎているのかもしれないな。でもとてもうまい人なので、そのうち全然違うキャラとかも普通にこなせていくのではとも思う。
三浦友和はいつの間にか、本当にしぶくてうまい役者になったなと思う。今回の金貸し役も実にいい。妻との思い出の地を巡る散歩についてのウンチクとかもしっとりさせる。正統派二枚目俳優にして山口百恵の旦那、よくも悪くも優等生俳優だったこの人もいつの間にか中年、あるいは初老の役どころきちんとこなせるようになったんだなと思った。
キョンキョン=小泉今日子もよかった。ある意味この映画の中で一番光っていたかも。もはや可愛いおばさんやらせたら、この人の右に出る女優はいないのではとも思う。薬師丸ひろ子のおばさん役もけっこう好きなのだが、キョンキョンには色気がある。ちょっと悪っぽいというのかな。そういや最近の資生堂のCM。あれも実はけっこう好きだったりして。あの「なによ〜」はオヤジ心をくすぐるな。
映画では三浦友和扮する金貸し福原の知り合いでスナック「時効」のママ役である。数日間、福原とオダギリジョー扮する大学生文哉と彼女の姪ふふみの四人で擬似家族のような生活を送るのだが、これがなんとも懐かしくてホノボノとした家族なのだ。実年齢のキョンキョンはまだ42歳。とてもオダギリジョーのような息子がいる年齢ではないのだが、映画の中ではどうしてどうして不自然さがない。二人で上野動物園にいくシーンなどはある種絶妙なくらい息が合っている。
なにも考えずに、また前知識もなくみた映画だったので、けっこうもうけモノみたいなお得感があった。この映画「転々」は買いでした。