年末年始の物故者オスカー・ピーターソン

引越しもようやっと片付いてきたというか、少しだけ落ち着いてきた。で、余裕ができたというわけではないのだが、なんとなく気になっていたことなんだが、確かジャズ系のビッグネームが亡くなっていたよな〜と思いながら調べていくと案の定というか、オスカー・ピーターソンが死んでいました。
http://www.nikkansports.com/entertainment/f-et-tp0-20071225-299456.html
12月23日、ちょうど引越しの佳境の頃だったから、なんとなくニュースを目にしたかもしれんがやりすごしていたみたいだな。82歳、大往生なんだろうな。
「1950年代、白人が主流だった欧米の音楽界で成功を収めた数少ない黒人音楽家の1人」という記事はジャズという範疇にあってはなんとも的外れだ。1950年代のジャズのメインストリームは黒人音楽家が主流だったはずだしね。同じジャズ・ピアニストとしてピーターソンと比較されることもあった白人のビル・エヴァンスのほうが、こと白人というだけでマイノリティ的だったと思うのだが。
とはいえこれを商業的成功という視点からだけでいえば、急速にこの記事の妥当性は高まるようにも思える。50年代主流派の黒人ミュージシャンたち、例えばブルーノート終結した数多の才能あるプレイヤーたちもその名演奏とは裏腹にしのぎという点では、かなりシビアだったわけだし。みんなクラブで酔客の前で演奏してたんだよな、たぶん。商業的に成功したスターミュージシャンなんていうのは、ほんの一握りのはずだったんだと思う。食えないからヨーロッパを転々としたり、移住したりもした。日本に頻繁にやってきたのは、本国では考えられないような好待遇を与えられたからなんだろう。
そんな中で商業的にも成功した数少ないミュージシャンの一人だったのかもしれないねピーターソンは。カナダ出身だから同じ黒人でもあまり人種差別の影響とかも受けていないのではと勝手に推測する。彼の演奏からもあまりブルース的な暗さはあまり感じられない。アーシーな泥臭さや黒っぽい感じもしない。やわらかくて軽くはなやか、それでいて超絶技巧でスピード感あふれる演奏をする。今、ベスト盤を聞きながら書いているのだけれど、なんていうのだろうこれぞジャズ・ピアノみたいな感じだ。
エヴァンスのような硬質な音ではない。エヴァンスを特徴づけるようなリリシズムとは無縁のようにも思えるけど、けっしてそうではないな。これまでどちらかといえば、ピアノといえばエヴァンスばっかり聴いていた。黒ではガーランドやホレス・シルバーとか。もっと若い時期はコルトレーンの延長上でマッコイ・ターナーみたいな超ハード(固め)系のとかばっかりで、ピーターソンとはずっとすれ違いばっかりだったな。
でも、行きつけのジャズ喫茶なんかではかかるとついジャケットみて誰だっけみたいに確認してから、アルバムに手をのばすことが多かった。万人受けするけどずば抜けたジャズ・テーストの持ち主っていう感じのする第一級のミュージシャンだったな。今かかっているのはウェスト・サイド・ストーリーからの「TONIGHT」だけど、この早弾きはちょっと真似できないな。ジャズの神様を常に背中に背負っているような人だったんじゃないかな。
1993年に脳梗塞で半身不随になったらしいが、リハビリを続けて復帰したという話もある。おそらく片手だけの演奏だったのかもしれん。14年前だから60代後半のことだ。そういう意味では最後までけっしてジャズの神様から見放されることはなかった人なんだろう。この人のポートレイトはいつも太っちょで満面に笑みを浮かべていたような気がする。4回結婚して6人の子どもがいるという。幸福なジャズ・ジャイアントがあっちの世界に逝ったということか。冥福を祈ります。