「NIGHT IN NEW YORK」Elbow Bones & The Racketeers

ナイト・イン・ニューヨーク 前週に続いて古いカセットテープを整理していたら、このアルバムをダビングしたカセットが出てきた。懐かしい。早速かけてみる、しびれる。「NEW YORK AT DAWN」というのが正式なアルバム名なんだけど、大ヒットした表題曲ともいうべき「NIGHT IN NEW YORK」のみで語られるアルバムなんだろうと思う。
このエルボウ・ボーン・アンド・ラッケッティアーズというふざけたバンドについては当時からほとんど予備知識がなく、ただただ「NIGHT IN NEW YORK」にしびれただけ。試しににネットで検索しても解説したものはほとんどない。唯一以下のサイトがやや詳しいかなという程度。
http://modernpop.jugem.jp/

ELBOW BONES AND THE RACKETEERS は、大学時代に心理学を専攻していた元スタジオエンジニアの知性派、エルボウ・ボーンズを中心に、キッド・クレオールことオーガスト・ダーネルとのセッション経験を持つ元 OHIO PLAYERS のダッチ・ロビンソンとステファニー・フラー、同じくオーガスト・ダーネルにソロアルバムのプロデュースを依頼した経験を持つギッチィ・ダンという3人のヴォーカリストを擁して結成された、ホーンセクションを含む総勢10名以上の大所帯バンドです。しかし、珠玉のダンスクラシック「A NIGHT IN NEW YORK」という大ヒットナンバーを本作から輩出したというデータ以外、データらしいデータはほとんどなく、実に謎の多いバンドですが、このELBOW BONES AND THE RACKETEERS唯一のオリジナルアルバム『NEW YORK AT DAWN』の素晴らしさは、時代を超えて語り継がれるべきであると言えるでしょう。

この記述を読んで初めて、エルボウ・ボーンズが個人名であることを知ったりして。まあ芸名というかシャレでつけたんだろうけど肘の骨と詐欺師だもん、まったくふざけた名前だ。キッド・クレオールのプロデュースということも初めて知ったんだけど、ようはこのアルバムがきわめて作為的かつ企画モノだったんだろうという推測します。とにかくこの一枚で見事なまでに消えてしまったわけだしね。
この曲を最初に聴いたのはいつかというと、たぶん1984年か85年のどこかで当時テレビ東京でやっていたMTVというプロモーションビデオばかりを延々流し続ける深夜番組だったと思う。おそらく土曜の深夜にやっていたんだと思うが、この時間帯のテレビ東京は、こういうお手軽で楽しい音楽番組を昔からやっていたと記憶している。「トム・ジョーンズ・ショー」もそうだったし、「ナウ・エクスプロージョン」というMTVの先駆的な番組もあったな。「ナウ・エクスプロージョン」ではやたらサイケな意味不明な動画のバックにプログレ風のロック流したり、デヴィッド・ハミルトンあたりの写真のバックにサンタナ流していたのをよく覚えている。
そんでもってそのMTVで何気に「NIGHT IN NEW YORK」のビデオ・クリップが流れたわけだ。で、曲とともにそのビデオに一気に魅了されてしまったわけ。当時、MTVは毎週ビデオにダビングしていたので、もう繰り返し観た。そのビデオ・クリップはかなりストーリー性があり、懐古的なナイトクラブの人間模様みたいな感じになっていた。クラブでバンドをバックに歌うボーカル、その前での客たちの群舞。それらを背景に世間知らずの娘さんとサックス・プレイヤーの恋とか、いろんなものが組み合わさっている。本当によくできたビデオで、いっちゃなんだけどコッポラが撮った「コットン・クラブ」なんかよりも実は出来がいいんじゃないかと思うくらい気に入っているわけだ。
つくづく思うけど、わずか5分足らずの曲とそれをバックにしたビデオ・クリップでもいろんなものが表現できるし伝わるものなんだよな。「コットン・クラブ」みたいに長々やるもんじゃないと。ああいうのは冗長巡回型映画っていうんじゃないの、って今思いついたんだけど。
で、あのビデオ・クリップをもう一度観たいと思ったわけ。ダビングしたビデオはとっくのとうに無くしてしまったいるから。で、ユーチューブをくぐってみると、これがけっこう簡単にみつかるわけなんだ。テクノロジー万歳!で、永久保存よろしく早速ダウンロードして繰り返し観てみる。やっぱりいいね。随所にいかにもっていう感じの臭さとかもあるにはあるけど、これはもう意図してやっている臭さだと思うと、それがまた癖になる。このビデオの演出誰がやったんだろうなどという疑問も出てくる。作りはかなりいいので、ひょっとしたらそこそこ名のしれた監督さんがやったんではないかなどとも想像する。
役者さんもなかなかの名演技だと思う。ボーカルのちょっと舌足らずなお姉さんが、前述のステファニー・フラーなんだろうか。けっこう雰囲気があって好きだね。そしてメインで踊る二人のダンサー、太っちょと痩せもかなりいかしたダンスを見せてくれる。太っちょのほうはなんとなくだけど、「バンド・ワゴン」のシャイニー・シューズのナンバーでアステアとからむ太っちょの靴磨きを彷彿させます。もちろん時代は大幅に異なるんだけど。
エルボー・ボーンズはおそらく最初に登場するウェイターとバンドの指揮者あたりなんだろうと思う。まあぜんぶ推測なわけだけど。それとサックス・プレイヤーに失恋しちゃう女の子もものすごくいい表情だしていて個人的には大好きです。というわけで、まあこういうビデオ・クリップなんだけど。