ビデオテープを捨てる

本の次はビデオテープだ。日曜日に大まかに整理しておいたものを、プラゴミとして本日捨てた。だいたい120〜130本くらいだろうか。これでもたぶん在庫分の三分の一くらいでしかないのだから笑ってまう。ことビデオについていえばこれまでの引越しの時もぜんぶ持ってきていたし、処分するという感覚がなかったか。
映画についての何本かは、それこそ棺桶にも入れておきたいとさえ思っていたくらいだし。ずいぶんと金かかっているんだよな。一番古いものだと1983年頃のものまである。24年前。試しに「スーパーマン」とラベルが貼ってあるのを観てみる。1983年10月8日録画。テレビ放映のものをダビングしたものらしく吹き替えである。しかしけっこう観れるものだな。このカセットには他に「Uボート」と「アルカトラズからの脱出」も入っている。ぜんぶ三倍速でテレビからのダビングのようだ。
最初にビデオデッキを買ったのは多分この頃、1982〜3年頃だったのだと思う。15万前後したんじゃないのかな。ビクターのVHSを買ったのだが、当時はVHSとソニーのベータが競っていた時代だ。趨勢がどちらに行くかなどはまだまだ判らない時代だったんだと思う。今ではビデオカセット自体がDVDに取って代わられることになったのだから、世の中っていうものは確実に進歩しているということなんだろうな。
当時はビデオカセット一本が千円前後したように記憶している。ぽつぽつ出来初めていたレンタルビデオ屋でソフトを借りると一本千円円くらいだった。さらにその頃はダビングサービスというのをやっていて一本二千円くらいで映画とかをダビングしてくれた。レンタル屋がそういうのを商売にしているのだから、著作権問題についても牧歌的な時代だったということだろう。しかし、名画を字幕スーパーで一本手に入れるのに五千円くらいかかった時代だったということだ。とはいえ当時の映画ソフトは三万前後したくらいだから、それでも割安感はあったのだと思う。まあそんな思いをして手に入れた名画は、それこそ棺桶にも入れたいと思うのもさほど大袈裟なことでもないかなとも思うよ。二十代の安月給の中からのことだったから。
'90年代に入ってすぐだったか二代目としてビデオデッキを2台同時に購入した。東芝のアリーナとフナイかどこかの廉価品だ。これを駆使し、さらにビデオレンタルも500円くらいになっていたのでダビング三昧の日々を続けた。この時期には50〜60年代の大好きなハリウッド映画をほとんど手に入れビデオコレクションもけっこう充実していた。MGMミュージカルも主要作はほとんど揃えた。オードリ・ヘップバーンもだいたい揃えたなどなど。
それらのほとんどがわずか十数年で無用の長物になるとは思いもよらなかったな。DVDにこれほど簡単にとって変わられるようになるとは。レコードからCDへの代替わりもある意味急激だったけれど、それでもレコード自体がまったくなくなることはなかった。うちでも厳選して残した100枚くらいはまだまだ健在だし、年に数回は引っ張り出して聴く。プレイヤーが駄目になったらまたヤフオクあたりで程度の良い20年モノを入手すればいい。
結局レコードが生き残ったのは、長きにわたるレコード時代の文化的な遺産があるからということなんだろうな。ことソフトについてだけいえば、それらはたいていCDにとって代わられてしまった。それでもレコードとその周辺的な部分、総体としてのアナログミュージックの文化みたいなものなんだろう。
それに対してビデオカセットはどうか。もともと家庭に普及にしたのはここ20〜30年のところだからソフト的に背景文化としても歴史的には底が浅い。だからこそDVD機器の価格が急激に下がったことにより、一挙に代替わりしてしまったということなんだろうな。しかしレンタル屋さんの棚もDVDにとって代わられたのは、本当にここ2〜3年のことだと思うのだ、時代の変化を目の当たりにしているという実感を時々は思うこともある。
こうなると問題はハードの代替わりと同時にソフトの代替わりということなんだが、映画とかは一挙にDVD化したけれど、パーソナルなソフトの部分だろうな。うちなんかでもデジタルカセットで録画した娘の成長記録なんかはまずビデオカセットにダビングしてたんだけど、ここ1年くらいで総てデジタルカメラから直接DVDにダビングしたもの。けっこう地味で時間のかかる作業だったけれどね。
みんなの家庭にもこういうプライベートなソフトが沢山あるのだと思うけど、これらを今後どう保管していくのかっていうのも問題といえば問題。ダビングサービスはあるにはあるけど、あれってビジネスとしては成功するほどに普及しているのかな。結局撮ったはいいけど、そのまま物置の奥に眠ったままみたいなことになってしまうのかな。何十年もして大掃除かなにかで発掘したソフトをいざ再生しようとしてもハードがなかったなんてことがありそうだな。
自分の在庫分についていえば、名画系のほとんどはすでにDVDで手に入れてしまった。DVDもある意味、パソコンで簡単にコピーを作成できる。いやDVDソフトがここ数年で劇的に価格が下がってしまったことを考えるとコピーの手間隙考えるともはや購入したほうが費用対効果では割安かもしれない。映画のコレクションとかはすでにビデオカセット時代を凌駕するほどになっているけど、スペース的には三分の一くらいですんでいる。もう老後の心配はないっていう感じかな。
テレビ系の一時的ダビングについていえば、これはほとんとカミさんの範疇だけど、一時は20本くらいのビデオ・カセットに月曜から金曜までのドラマやバラエティなどを毎日取りまくっていた。これはHDD付のテレビを買ったおかげでとりあえずすべて解決してしまった。うちのは160ギガだけど、だいたい消費しているのは30%くらい。家にいるのに、デイ行ったりする日は昼間の連ドラだのワイドショーまで取っている。まあテレビ大好きだから、まあいいかなとも思っている。
ビデオカセットの衰退は直接的にはDVDの普及なんだろうけど、本当のところはこのHDD録画なんじゃないのかなという気もしている。HDD録画機の普及が続くとパーソナルな録画はほとんどがこれにとって代わられるんじゃないのかなと。DVDの皿がいくら安くなってもやっぱり手間だし、それに比べればHDD録画は本当に楽だからね。
ただ気になるのはブルーレイやHDDDVDなぞという例の次世代DVDだ。メーカー的には技術革新=ビジネスチャンスということで次から次と新機種導入ということなんだろうが、その度に規格が異なるというのは勘弁して欲しいところだよ。後20年くらいして、またハード、ソフトを買い換えてなんていうのはちょっとなあ。その頃は70代だから、そういうことに費やすエネルギーはないだろうけど。でも、「さらばDVD」みたいなことを、ぶつぶつ言っていたりして。