海水浴へ行く

昨日は大洗まで足をのばし海水浴へ行って来た。
以前から年に1〜2回は海水浴とかに行ってはいた。でも妻がこういうことになった以上、プールとか海水浴とかはさすがに難しいだろうと思っていた。妻には留守番してもらい、娘と二人で行くことになるのだろうと。去年も一度だけ近所のプールに娘と出かけたことがあった。妻はプールサイドで見ているからといったけれど、さすがに両方の面倒みるのも難しいだろうと、車椅子でプールサイドというのも想像するだけでしんどいとも考えた。そんなこともあり、去年は海へは一度も行かず仕舞いだった。
今年も近所のプールくらいだろうと思っていたのだが、妻が海へ行きたい言い出した。海は車椅子では難しいだろうとも話しておいたのだが、一応身障者でも利用できるような海水浴場はないかと調べてみると、バリアフリーをうたっている海水浴場もちらほら見受けられることがわかった。それで家から日帰りで行ける範囲内で、しかも水陸両用の車椅子の貸し出しを行っているということで大洗サンビーチに出かけてみた。
http://www.town.oarai.ibaraki.jp/~kankou/sea/uvb.html
家を7時くらいに出て関越所沢から外環へ入り三郷から常磐道という道筋なのだが、外環、常磐道で事故渋滞が連続していたので、けっこうひどい渋滞にはまってしまい、なんだかんだで11時過ぎになってしまった。大洗の駐車場では、身障者が同乗していることを係りの人に話すとすぐに身障者用の駐車場を案内してくれた。しかも無料。調べた限りでは身障者手帳を提示すると無料とのことだったのだが、その必要もなかった。
ただしこの海岸はこの駐車場から海岸までがけっこう長い距離がある。移動には相応の時間がかかる。駐車場からパトロール本部まで車椅子で移動しそこで水陸両用車椅子ランディーズを貸してもらう。さらに本部に隣接した場所に更衣室や身障者用のトイレや温水シャワー室もあるのだが、駐車場から100メートル以上の距離があるので荷物やらを取りに行くため介助者は何往復とかもしなければならず、けっこうしんどい目にあった。とはいえ、無料で車椅子貸してもらえたり、身障者用の施設を設けているのだから、そのくらいのことはある意味目つむって有難がるべきなんだろうなとも思う。実際こんなに身障者のことを考えてくれている海水浴場なんてそうそうないわけなんだから。
水陸両用車椅子ランディーズは、大きなバルーン型のタイヤがついた車椅子だ。以下のサイトに詳細あり。
車椅子ランディーズで海でも山でもバリアフリーに、あなたの生活を変えます!
実際に妻を乗せて押してみる。確かに砂浜でもきちんと進む。ただし砂浜もそこそこ平らなところはいいのだが、例えば車の轍とかがあったり溝が深いところなどではけっこう立ち往生してしまう。こういう場合は普通の車椅子と同じで前輪を浮かして乗り切るのだけれど、やはり作りがしっかりしていることや大きなタイヤのせいもあり、かなり重い。前輪をあげての走行はけっこう介助者への負担になりしんどい部分も多々あった。
さらに水の中ではどうか。波打ち際からどんどんと海の中に入ると、じょじょに浮き上がってくる。後ろからしっかりとハンドルを握って押さえてはいるのだが、波にあたると左右にバランスがくずれ気味になる。妻も乗っていて少し怖いという感想だった。これでひっくり返ると乗っている本人も介助者もそこそこのパニックになるかもしれないなとも思った。海辺でランディーズを乗る際に乗っている人間がライフジャケットを着ている写真をよく見かけたのだが、これは水中でひっくり返る可能性を考えてのことなのかもしれないなとも思った。波うち際くらいだったらまだいいが、ずんずん水の中へ入っていくとけっこうバランスをとることにも力が必要だし、介助者はいろんなことに神経を集中させる必要がある。できれば最初に説明とかあってもいいのかもしれないなとも思った。
なんとか腰のあたりくらいまで水の中に入ってみる。押し寄せてくる波が何度か顔にかかる。それでも妻は「気持ちがいい」を連発していた。本人にしても、押している私にしてもよもや海水浴なんて夢の夢のことだったわけだ。妻が倒れたのは一昨年の11月。退院して自宅療養が始まったのが昨年の6月。去年の今頃にはこんな風に海水浴に一緒に行くなんてことは思いもよらないことだった。それがどうにかこういう風に海に一緒に出かけることができる。介助さえあれば一応海にも入れる。ユニバーサルデザインのちょっとした工夫と、ちょっとしたハードウェアの提供があれば可能なわけだ。
もちろん妻の状態が大幅に改善されてきたということだってもちろんある。実際去年と比べてもいろいろな意味で妻の状態は良くなってきている。歩行距離も伸びているし、料理とかもヘルパーに助けられながらも毎日作れるようになってきているのだから。
妻は途中で少し砂浜を歩いてみたいというので、杖で波打ち際を歩いてみた。それから少しだけ海の中へ足を進めてみた。横にたってついて歩いたが、膝のあたりに水がくるくらいまでけっこうしっかりと歩いた。波があたってもバランスがくずれることもなく。ところがユータウンして戻るとなるといきなりスローダウンし始める。後ろからあたる波に押されることで不安になるのだろうか、また装具なしで歩いているため筋肉に緊張が走るのだろう、じょじょに内反尖足がおきてくる。ただでさえ膝下が水中で柔らかい砂に面しているのに、内半尖足が起きるとどうにも前に進めない。彼女の左足の下に私の右足を入れて内側に向いてしまう足の裏を平行にさせようと介助する。妻の緊張は次第に麻痺した左腕に及んできて軽い痙攣状態にもなる。
一度娘にランディーズを持ってこさせて波打ち際で乗り移らせようかと思ったが思うようにいかなかった。なんとか倍以上の時間をかけて砂浜に戻ってからランディーズに乗せた。それでも妻はけっこう満足そうだった。そう片麻痺でも砂浜や波打ち際を歩くことだってできるのだから、妻にとっては誇らしい時間だったのかもしれない。
ある意味では次の課題とかもでてきたのかもしれないとも思った。装具なしでの歩行では確実に筋肉の過緊張から内反尖足がおきる。これを仕方がないものとして一生装具ありを前提にしていくべきか、あるいは装具なし歩行を練習して徐々に距離を延ばしていくべきかどうか。医師や理学療法士といった専門家に聞けば、基本的には装具なし歩行は安全性からみても認められないと言われるだろう。でも、退院しても基本的生活は車椅子と言われたけれど、家の中では100%車椅子なしで生活しているくらいにまでなっているのだし。杖歩行にしてもずっと使っていた4点杖からT字杖に変えている。そう思うと装具なし歩行を徐々に実践させてもいい頃なのかもしれない。
妻についている時間が長かったので、娘と一緒に遊ぶ時間が限られてしまった。それでも娘はほとんど時間海の中にいて浮き輪で浮かんでいた。一人っ子で一人遊びには慣れているとはいえ、少し可哀想な部分もあるかとは思ったがまあしょうがないところだ。それでも何回かは一緒に遊んであげた。でも、妻の介助をしつつ、娘の相手もしてというのは正直しんどいところでもある。ランディーズを押すのもけっこう重労働だし、駐車場から荷物やビーチパラソル、ピクニックテーブルとかを持ってくるとかで何度も行ったきたりもした。五十路を過ぎてこういうのは、しかも炎天下にやるのはしんどいな〜というのが実感でもあった。
それでもだ、こういうバリアフリーにそこそこ力を入れてくれるビーチとかもあるわけなので、年に1回くらいは利用することになるのかなとも思った。まあ私の体が動く間は頑張りたいとは思うわけだ。
大洗サンビーチのランディーズ

いざ乗ってみると