植木等死去

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http://hochi.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20070328-OHT1T00100.htm
旧聞系ではある。ここ数10年は枯れた性格俳優として人気があったこの人がクレイジー・キャッツの一員として絶大な人気を集めたスターコメディアンであったことなど今の若い人たちにはわからないだろうな〜というのが率直な感想だ。
実際のところ例の「無責任男」、「スーダラ節」の頃のこの人は、ある種のスーパースターだったのだろう。映画にしろ歌にしろ次々とヒットさせた時代の寵児といったところだろうか。矢作俊彦が朝日に寄稿した弔文では、植木等美空ひばり石原裕次郎と同列に論じていた。そこまでのカリスマ性を備えていたかどうかは疑問だ。それでも1960年代、戦後日本のある種の時代性を象徴するスターだったことは間違いない。
私もクレイジーものの映画の何本かは、まさしく同時代的に観ている。たいてい若大将シリーズと二本立てで封切りされたから。小学生の頃だったがけっこう楽しんで観ていた。というのも元々クレイジー好き、「シャボン玉ホリデー」は毎週かかさず観ていたから。
植木のあの定番ギャグ「およびでない、およびでない、こりゃまた失礼しました〜」に笑い転げたくちだ。
シャボン玉ホリデー」は30分番組だったから、短い時間にコント、歌が凝縮されていたんだな〜と改めて思う。牛乳石鹸提供、冒頭の牛の鳴き声のギャグ、ラストのザ・ピーナッツの歌う「スター・ダスト」、ザ・ピーナッツに肘鉄を喰らうハナ肇。40年近く前のことなのにけっこう鮮明に憶えている。時々幾つかのコントとかをユーチューブで見かけることもある。懐かしいものだ。
クレイジー・キャッツはもちろんハナ肇がリーダーだったのだが、植木等のほうが4〜5歳年長だった。ハナはグループきってのスターである植木に一目置いていたのだが、植木は植木で年下のリーダーをたてていたという話を聞いたことがある。一枚看板であれだけ売れまくったのに植木はグループを脱退することなくクレイジーの一員であり続け、ハナの葬儀に際してクレイジーの解散を宣言した。
聞けば植木は酒もやらない生真面目なタイプで、無責任男のイメージとのギャップに悩んだ時期もあったという。ジャズ・ギタリストとしては、バニー・ケッセルのスタイルに近いプレイをしていたという。
ハナ肇は今から14年前、1993年に肝臓癌のため63歳で亡くなっている。強烈なリーダーシップをもった親分肌の人物で、酒や遊びも豪快だったという。クレイジーのメンバーはハナの後も石橋エータローが1994年に胃癌で、1996年に安田伸が長い癌の闘病の後に心筋梗塞で亡くなっている。
存命のメンバーは1930年生まれの谷啓(77歳)、1929年生まれの犬塚ヒロシ(78歳)、1924年生まれの桜井センリ(84歳)の3人だけだ。ガチョーンの谷を筆頭にこの三人にはぜひ長生きしてもらいたいと思う。
しかし中村草田男の名句「降る雪や 明治は遠く なりにけり」ではないけれど、次第に昭和という時代も遠くなっていくのだな思う。