『パーマネント野はら』

パーマネント野ばら 最近とみに作家色が強くなってきたというのだろうか、作品性というか文学性が出てきたと私には感じられる西原の最近作だ。といっても去年の9月刊行なんだけど。田舎の村にひとつしかないパーマ屋を舞台に、不幸で苦労ばかりの中年女たちの泣き笑いが綴られている。パーマネント野はらはそんなパーマ屋の店名だ。そこに出もどりの一人娘が子連れで帰ってきている。娘は三十代、ろくでもない苦労したせいなのだろう、精神を病んでいる。一人で海辺に座り、想像の中の男と想像の恋をかたりあっている。
すさまじいシチュエーションのなかで普通ではない、苦労と生きていくことへのバイタリティに溢れ、好色で、恋しては男に苦労かけられっぱなしの、しょうもない女たちの泣き笑い人生を描いている。たぶん、その作品性という意味では西原の最高傑作に位置するのかなとも思う。
ネームやシチュエーション、そのエピソード群もそんじょそこらの軽い小説を軽く打ちのめすくらいの迫力がある。出戻り娘が母親の再婚相手のオヤジが他に女をつくって転がり込んだ家を訪ねるシーン。

私の母はもてる。
私がリコンしている間に再婚した。
けどそのおっさんは今、となりのナス農家のばあさんと同せい中
「ねぇニューお父さん
 帰ってきてくれへんかな〜」
「お母ちゃん キゲン悪うて私があたられてんのよ〜 毎日つらいの」
私の母が鬼ように怒ってんのは その同せい相手が 母よりはるかに年上で、母よりはるかにぶさいくだからだ。
恋ってすごいな
「男の人生は真夜中のスナックや」
「ええか 夜中のたとえば2時に何でか次のスナックにハシゴする男の気持ちわかるか?2時やで2時。次行く店は絶対ここよりろくでもないで」
「けどやっぱりワシとゆう男をここで終わりにするワケにはいかんのや。
 わかってくれや。なっなっなっ。」

これってあまたある文学をぶっとばすくらいのど迫力のあるセリフだと思う。そのくらいある種の人生の真理をずばりと言い表している。・・・・のような気がする、たぶん、きっと、おそらく。しかし、それはそれとして、なんかぞくぞくするような決めゼリフですな。西原の漫画はもはや漫画の域を超えてしまったような気もする。なんか空恐ろしいくらいに誤読してる、私って。まあいいか、贔屓の引き倒しのごとくに西原大好きなんだから。