辞書ネット化ピンチの紙版

朝日の夕刊一面に載っていた。以下こんなような趣旨。

辞書業界でインターネット版の発売が相次いでいる。10月末の「大辞林」に続き、来夏には「日本国語大辞典」もネット上に配信される。主なポータル(窓口)サイトで無料で利用できるのが当たり前となる中、電子辞書は「軽さ」が受けて健闘しているが、「紙」の部数は減る一方だ。出版社は生き残りをかけ模索を続けている。(寺西哲生)

以下、辞書のネット上での公開例として小学館三省堂の例を紹介している。さらには電子辞書の活況例などもとりあげている。ただし電子辞書のロイヤリティや検索サイトへの提供料は紙版の落ち込みを補填するまでにはまったく至っていないため、出版社の模索は続いているというところで、この記事は終わっている。
実際のところ紙の辞典はどこまで行き続けられるのだろう。一方では絶対になくならないという冊子版教条主義みたいなものもあれば、すでに電子辞書、ネット検索の利用が大幅に上回っているだろうから、いずれは消えて行くだろうとする意見もある。
辞典の改訂版を出すというのは、出版社にとっては一大イベントだ。そのための編集上の仕込み、初版あるいは次の重版あたりで投入した資金を回収するために相当の刷り部数が必要となり、それを売るための販売戦略を細かく練られる。冊子体全盛の頃は5〜7年くらいのサイクルで改定版が刊行されたが、ここ10年くらいのところでは紙媒体の先細りのためか、刊行サイクルは延びてきている。また出しても、それこそこれが紙媒体としては最後になりそうという声がひそひそ声で語られる。
最も辞典は定期的なメンテナンスとしての改定が必要であり、紙媒体としての売れ行きや権威みたいなものが電子辞書での寡占にもつながるから、もはや改訂版を出すのが苦痛になっても出さざるを得ないのが現実なのだ。
しかし本当のところでいえば、百科事典にしてもウィキペディアがあればこと足りてしまうし、ヤフーやgoo、exciteなどの検索サイトでは無料の検索辞典が用意されているから、有料コンテンツとしてのウェブ辞典サイトの利用も実は先細りなんじゃないのかなという気もしてはならない。いわんや紙媒体においておや、っていうところかな。
ここからは私の単なる思いつき、夢想に近いものだけど、ウェブ辞典も現在のようなただデーターベースを利用するだけのものに可能性はないだろうなと思う。ウェブ進化論Web2.0論的に考えていけば、辞典もただネットの向こう側に「ハイ用意してあります、利用してください」では意味をなさないだろうということだ。
それではWeb2.0的なネット辞典ということでいえば、どんなものがイメージできるか。今こうやってハテナの日記サイトを利用しての思いつきなのだが、辞書をブログ化できないかなということがある。ネット上の基本コンテンツとしての辞書がある。それを利用料を払って個人ないし、グループで自由に編集可能な私的辞書として構築していくというものだ。ようは今何億あるかしらないが、個人サイト(ブログ)の辞書版をネットの向こうに構築するというものだ。技術的なことはわからないけれど、今のPCの処理能力、ネット上での検索エンジンの工夫、ネットの向こうのサーバーの質・量でなんとかなるのだろう。
さらには例えばネット上のマイ辞書の中で広辞苑現代用語の基礎知識や理化学辞典を合体させたりして、個人が使いやすい辞書を作っていけばいいのだ。そのうえで、今のオンデマンド技術を使えば、ネット上に構築した辞書を冊子体にすることもできるだろう。
中学とか高校とかの総合学習の一環として一学年あるいは一クラスで年間を通してウェブ辞書を編集する。学年の最後に冊子体を発行して卒業記念にするとか、企業で大辞林+自社で利用する専門用語を盛り込んだオリジナル辞書を編纂して、それを関係者に配るとか、まあ現在の辞典の名入れとかを発展させるようないろんなビジネスモデルができそうな気もするのだが。
出版社はまず自社の著作権を持っている辞書コンテンツがあればいい。それとネット業者、大はグーグルやヤフー、あるいはハテナなんかでもいいかもしれない。この二つがうまく連動すれば、なんか面白いことが出来そうな気がするのだが。