迷走するふじみ野市議会

なにやらふじみ野市議会がとんでもないことになっているらしい。ふだんから市政についての情報を得るために時々くぐっていてそこそこ重宝しているのだが、ふじみ野市議では以下の4人の市議がブログ、ウェブを開設している。合併で44名と水ぶくれした市議会の中で、この4人だけが日々の活動状況を報告されているわけで、市議として私が評価できるのはこの方々だけでもある。後の市議はというと、日共系の市議はよく駅頭でのビラ配りで顔を合わせているので、そこそこ見知ってはいるけれど、それ以外の市議はというといったい何をやっているのか皆無という感じでもある。
ここのところ例のプール事故以来、市があの事故にどのような落とし前をきっちりつけてくれるのか(たぶん何もないだろうけど)、というまあ一住民としての素朴な興味から割りと頻繁にそれぞれのサイトをのぞくことが多い。で、今日くぐってみると昨日の市議会がとんでもないものになっていた。

鈴木啓太郎市議のサイト
http://www.keitarou.info/
民部佳代市議のブログ
http://blog.livedoor.jp/mimbu_kayo/archives/50862787.html
山川寿美江市議のブログ
http://sumizumi9.tea-nifty.com/yamakawa/2006/09/post_e745.html
青山ひろあき市議のサイト
http://homepage1.nifty.com/aochanworld/action.report.html

これはなんでもひどすぎるとも思った。今回の9月定例議会は大井での悲惨なプール事故を受けて初めての議会である。当然、ここでは市の責任問題や原因追及などが討議されるはずだった。実際、8月に共産党がプール事故についての原因追求、再発防止のための臨時議会召集を市長に要求したのに対して、市長は以下の理由での拒否を行っている。

●18年度第3回定例会が8月31日に招集の予定であること。
●この定例議会で請求事件を審議しても目的を達すると判断した。

そういう意味では、今回の定例議会はプール事故を中心に展開されるだろうとと一市民としては考えていた。実際、8月31日の開会にあたっては以下の特別決議がなされている。

大井プール事故に対する徹底した事故原因の究明と再発防止を求める決議
 去る7月31日ふじみ野市大井プールにおいて、流れるプールの吸水口に吸い込まれ幼い尊い命が失われるという悲惨な事故が発生した。亡くなられた戸丸瑛梨香さんのご冥福をお祈りするとともにご遺族の方々に深く哀悼の意を表すものです。
 市営プールという公共施設は、幼児から大人まで年齢や性別にかかわりなく、不特定多数の方々が夏のひと時を楽しく過ごすレジャー施設である。それゆえ利用者には一にも二にも高い規範に基づいて、安全確保がされている施設であるという深い信頼の上に安心して利用しているものである。
 しかしながら、今回の事故はこれら利用者の思いを裏切り、尊い人命が失われたという絶対にあってはならない事故であり、議会としても極めて心痛な思いである。市民に対し公共施設の安全・安心といった信頼性を根底から失墜させた極めて残念な事故であると重く受け止めている。何故このような事故が発生したのか、市は施設の構造、管理体制などあらゆる角度から事故原因を徹底的に究明し、早期に明らかにすべきである。そして、幼い尊い命が失われた事故の教訓を生かし、二度とこのような痛ましい事故が起きないよう再発防止に向けて、全市を挙げて取り組むよう強く要望する。
 併せて、市内全ての公共施設の安全管理体制の強化を含めた安全確認の総点検と全職員の危機管理意識の高揚を求めるものである。
 以上、決議する。
平成18年8月31日
ふじみ野市議会

それでいてきちんとしたこの事件についての質疑が行われたのかというとどうも疑問な部分がある。青山市議のウェブには以下のような記述がある。

9月議会は31日に開会しました。冒頭に大井プールでの事故に対して黙祷から始まりました。市長の挨拶もまず謝罪からとなりました。議会前に共産党から提出されたプール事故についての調査特別委員会の設置を求める決議請求に対して、市長は9月議会の開会が直近であり、その中で十分審議できると請求を退けました。しかし、実際に告示日に提出された一般質問の通告は前回より7人少ない24人にとどまり、またプール事故に対する質問を通告したのは8人で大きな争点になるのかと思っていただけに何だか拍子抜けする思いです。

44人の大所帯の市議会にあって、一般質問の通告は24人。その中でプール事故についてとりあげることを通告したのは8人なのである。市議会はプール事故だけをやっていればいいということはないという反論もあるだろう。しかし、これだけ大きな事故がおき、ふじみ野の名前がマイナス・イメージで全国区になってしまったこと、さらにこの事故が市の管理の徹底した不手際から生まれたまさしく人災による事件であることから、この事件に対してきちんとした落とし前ができないようでは、市政及び市の行政についての不信感は拭い去ることができないだろう。ある意味ではきちんとした対応がとれなければ、そこから先には一歩も進めないだろうという気さえするのだ。それに対して8名なのである。
ふじみ野市議会が11名の共産党議員を除いては、現在の島田市政に対してほぼオール与党である。さらにいえば自民党系、公明党系の与党議員が圧倒的多数を占めている。そのため全体として島田市長、島田市政を守るという意識が強かったのかもしれない。しかしそれはそのまま野党の共産党との為にする党派的対立を引き起こすだけであって、事故の原因追求と再発防止、失われたふじみ野のマイナスイメージをどう払拭するかという本来あるべき姿から遠いものだ。
それでは共産党はにすべての利があるのかというと、それは例によって??である。この党は民部市議や鈴木市議も指摘しているように、建設的な議論よりはスタンド・プレー、パフォーマンスがお好きである。ある意味では彼等のすべて活動の意義は党勢拡大、赤旗増売に繋がっているようなものだ。もし、共産党がすべての意味で今回のプール事故の原因究明、再発防止を第一義に考えているのなら、与党に対しての根気強い説得工作を徹底させなかったのだろう。民主主義の方法論は根回しと妥協による産物だ。なんとかそれぞれが歩み寄れるような方策に向けて努力しなかったのだろう。
議会最終日に反対派がおよそ歩み寄れないような議案を打ち上げ花火のようにぶちあげて、それが否決されることで反対派をたたくための戦術として利用するようなやりかた、ようは反対のための反対、徹底した野党主義はもう時代遅れだと思うのだが、どうだろうか。
とはいえ、今回の与党の流会戦術は、共産党のプール事故調査委員会の設置を求める緊急動議をつぶすためであることはみえみえだ。いくら共産党のスタンドプレーを言い募っても、弁解のしようがないところだろう。

「もう私は切れた。今度という今度は切れた。」

 自民クラブの田中市議はそうぶちまけたということだが、あえて言いたい。あなたの党利党略的パフォーマンスの憤りよりも、プール事故で亡くなった少女の両親はいく千倍も憤っているだろうということだ。
 田中市議らが共産党議員のスタンドプレーに怒って暴発的に起きたという今回の流会は、鈴木市議のブログにあるように明らかに逆の意味でのパフォーマンスである。

他の議員からは、共産党の失言を捉えて「100条動議」を制した田中代表の機転に賞賛の声も聞かれた。

田中市議の機転!?もうこんな党利党略の茶番は勘弁してもらいたいところだ。ひょっとすると実は共産党市議の与党を挑発する発言すらも実はシナリオがあったりしたのではと勘ぐる部分もないではない。とりあえずプール事故調査委、100条委員会の設置をつぶしたい与党と、プール事故を徹底追及しているのはうちだけというパフォーマンスができればいい共産党出来レースみたいなことまで想像してしまう。
共産党にもあえていいたい。第22号議案「障害者自立支援制度の充実を求める意見書について」の賛成討論で、なぜ与党を刺激するような発言をしたのだろう。事実だから。そんな自党を自賛する事実をあげつらうよりも、せっかくこの立派な意見書が議案として通すことのほうがよっぽど実のあることではないのか。なぜつまらぬ挑発をしたのだろう。やっぱり出来レース狙いを疑ったほうがいいのだろうか。
 もう一つ、鈴木市議のブログには共産党について興味深い記述があった。

 もうひとつの要因として、100条委員会をめぐる問題は無視できない。代表者会議では「100条は時期尚早」という見方で共産党の塚越代表も一致しており、そのため議会冒頭で全会派による「特別決議」を行ったと私などは説明を受けていた。ところが、議会最終日になって「100条」を共産党が動議で提案すると通告があり、これも自民クラブをいらだたせていた。
 この間、共産党という組織にしては珍しく内部の違いが透けて見えた。旧上福岡の議員は、先の岩崎氏を除いて全員が「プール事故」を一般質問に取り上げ、内容的にも市長の責任追及というトーンが強いものだった。山川、山口氏は一般質問で「市長・助役を尋問する」ため100条は必要と力説したが、旧大井の共産党議員で「プール事故」を質問項目に入れたのは6人の議員中、新井、塚越両氏のみで、質問も「契約や安全管理のあり方」といった点に限られ、市長追及型との温度差は明らかだった。

一枚岩であるべき共産党にプール事故についての温度差がある。これが事実だとしたら共産党もずいぶん変わってきたのだなとも思う。でも、そうでないとしたらこれは事実無根としてきっちり抗議するなり、削除要求なりすべきだと思う。ただ、なんとなくなのだが、全体として旧大井町の議員には、共産党を含めて、今回のプール事故についての連帯責任意識があるのではないかとも思う。さらにいえば、島田市政=旧大井町の町政であり、町の職員への身内意識みたいなものもあるのかもと想像する。このプール事故で明らかになりつつあるのは、旧大井町の管理レベルのお粗末さでもあるからだ。文中にでてくる塚越議員の出自はたしか大井町の職員であり、職員労組のあたりではなかったかとも思う。
しかしなぜこうまでして市議会が島田市政を守るような態度で、あまり責任追及に熱心でないような印象があるのだろう。それは島田市政とこの市議会が強引な一市一町の合併を市民の合意を得ることなく進めてきたからだろう。プール事故の原因の一つに、合併による弊害があったことがあげられている。合併前まで大井の市民プールと併設する体育館、武道場には町職員が常時いて毎日、管理会社の現場責任者からの点検報告を受けていた。それが合併後は担当者は旧大井町役場内の中央支所に勤務して点検等も2日に一度程度になっていたという新聞記事もあった。点検が減った理由をふじみ野市は、「合併で管理施設が倍増し職員の手が回らなくなった」としているのだ。
http://cc.msnscache.com/cache.aspx?q=3985987393194&lang=ja-JP&mkt=ja-JP&FORM=CVRE8
結局のところ、今回のプール事件を掘り下げていけば、合併の意義自体が問い直される可能性があること。合併を推進した現島田市政と市議会は実はそのへんのところを問題にされることにナイーブになっていて、この事件に消極的になっているのだはないかと私などは想像してしまう。
しかしこの市議会の顛末。正直いって恥ずかしいというのが一市民としての感想だ。党派的に共産党が悪い、与党が悪いと言っていればそれですむ問題じゃないと思う。もうこんな町引っ越してしまいたいとつくづく思う。もっともローン地獄で苦しむ自分としては、けっこう転居は現実的なタームにもなりかねないのではあるのだが。