イングランドVSトリニダードトバコ

苦しんで苦しんで、最後に勝負をつかんだ、そんな試合展開だった。守備一辺倒のトリニダードトバコに対してとにかくイングランドは攻め続けて。しかし攻めきれない。中央をきっちり固められているので、所謂決定的なゴール前という展開もあまりなく、どちらかというと外からのミドルや中盤からの飛び込みが主だったように思う。でもそれも決められない。今回のイングランドはタレントの宝庫でもあり、優勝候補の一角にもあげられていたけれど、いくらがちがちに守られていたとはいえ、守備の鍵をこじ開けられないようでは優勝候補とはいえまいとそんな感想を抱きながらイライラして試合を観ていた。ほとんどこれは第一戦のパラグアイ戦とほぼ同じ展開でもあったような気がする。あのベッカムフリーキックから生まれた幸運なオウン・ゴール以降の展開はこの二戦目とほとんど同じともいえた。
こうした状況にあってエリクソンは後半10分過ぎから動いた。まず58分にオーウェンアウト、ルーニーギャラガーアウト、レノン。負傷明けのルーニー登場に衆目惹きつけられてしまうけれど、ポイントはレノンの投入だ。右サイドからの突破を専任された若いMFは果敢にサイドアタックを試みた。これによりベッカムはフォーバックの右サイドバックの位置に入った。それまで単調な右クロスのほとんどを寄せに入った相手バックスにぶつけていたベッカムは後ろに下がることでフリーにアーリークロスを入れることができた。結果としてこれが先制点のアシストにつながった。
75分にはジョー・コールに代えてダウニングを入れた。典型的なサイド・アタッカーだ。同じ左サイドでもジョー・コールが中に切れ込むタイプなのに比べてダウニングはサイドをえぐってクロスを入れるタイプだ。ゴール中央に人を集めて守るトリニダードトバコに対して両サイドからの攻めを徹底させたエリクソンの見事な交代だ。若いサイド・アタッカーたちも監督の意志にみごとに答えた。
決勝点のベッカムのクロスからのクラウチのヘッドは、まさしくようやく決まったかと思えるような得点だった。思えばパラグアイ戦との連続でいえば178分目に生まれた得点。今大会のイングランドのエースをまかせられたクラウチがなんとか決めてくれたおかげで彼にもまた自信が生まれたはずだ。そしてもう一つこのチームの売りであるセントラル・ミッドフィルダー、ジェラードとランバートのうちジェラードがロスタイムにお得意のミドルをぶちこんだ。これでジェラード決勝トーナメントに向けてはずみがついた。この試合でも多分一番シュートを打っていたはずのランバートが次ぎの試合あたりでシュートを決めてくれるとこのチームは乗ってくる。
グループ・リーグで苦しんだチームの方が決勝トーナメントで力を発揮することのほうがワールドカップにおいては多い。元々優勝をめざすチームはコンディション作りを決勝トーナメントあたりに最良になるようにしている。グループリーグで全開のチームほど失速する例がこれまでにも何度もあるのだ。そういう意味では、苦しみながらも失点せずに勝ち上がってきたイングランドには期待できそうだ。ルーニーの使える目処がたった。うまく勝ち進めばベスト4あたりからはバリバリ動いてくれそうだ。もう一人のFWオーエンもコンディションが戻ってくれば。後はもう一人、二人サブ組から活躍してくれそうな選手が出てくればと思う。個人的には守備固めの人として使われているハーグリーブスあたりに期待している。ジェラード、ランバートともに一枚づつイエローをもらっているだけに先発起用もありそうだ。ユーティリテイプレイヤーだが個人的にそのセンスを買っている。
三戦目は相性の良くないスウェーデンだ。なんとか引き分けに持ち込めれば一位通過できる。もし負けるとなると二位通過でトーナメント一回戦の相手はおそらくA組一位のドイツ。開催国との早めの戦いだけは避けたいところだ。できればエクアドルと戦いたい。さあイングランドの快進撃は続くか。