予想した通りの得点差による敗北。1-3はまさしく日本、オーストラリアの実力差を如実に示している。今さら言うと後だしジャンケンみたいかもしれないが、F組はオーストラリアが台風の目だと思っている。実力的にはとび抜けたブラジルの下にクロアチア、オーストラリアと日本がアウトサイダーとして競い合うという展開が常識的なんだろう。1次リーグでブラジルを食う可能性があるとすればそれはオーストラリアなんじゃないかというのが私の予測でもある。
今回のオーストラリアのメンバーは23人中21名が海外でプレイする。イングランドプレミヤのレギュラー格も8名。もともと身体能力、運動量が豊富なタフなチームだ。そこに今回のチームではキューエルのようなテクニック溢れるアクセントもある。メンバーみただけでもかなりいけそうだと思う。さらに監督は前回韓国をベスト4に押し上げたヒディングだ。ひょっとしてブラジルを押さえて一次リーグ1位通過もありえるのではとさえ思う。最もグループ1位通過の場合は決勝トーナメント初戦の相手はE組2位になる。E組はイタリアとチェコが鉄板だが、普通に予測すれば1位はイタリアとなるだろう。決勝トーナメントの早い段階でイタリアとの対決を避けるうえでは何が何でも1位通過を狙いたいというところかもしれない。
前置きが長くなったけれど、あまり実態の伴っていないFIFAランキングは別にしても、ほぼ実力通りにオーストラリアが圧倒的に押し気味に試合を進めた。中村の1点はキーパー・チャージだろう。とはいえ1点は1点だ。幸運な得点により、なんとなくマイアミの奇跡を思わせるような感覚もあった。
後半15分過ぎからヒディングは、ケネディ、ケーヒル、アロイジと攻撃的な選手三名を投入した。これにはヒディングの何が何でも点を取りに行くんだという単純明快にしてかつきわめて意思ある思いが如実に示されている。これはピッチ上の選手に簡単に伝わる。ケーヒルはシャドウ・ストライカー型の中盤でプレシアーノと同じポジション交代だ。それに対してケネディ、アロイジはCBムーアやボランチのウィルクシャーとの交代。明らかにヒディングはリスク冒しても点をとるという意味をこの交代に付与していたわけだ。
前線はビドゥカとケネディという長身FW2名を配してロングボール、クロスをあげる。その後ろにキューエル、ケイヒル、アロイジというシャドウタイプの中盤がこぼれ玉狙いというきわめてわかりやすい展開だ。この戦術に抗するにはどうしたらいいか。一つにはオーストラリアのバックラインからの単純なロングボールを出させないために前線からのプレッシングだ。すでに足が止まりかけた高原、柳沢のうちの一人を生きのいい足の速いFWに早めに交代させる必要があったわけだ。それは玉田であれ大黒であれどちらでも良かった。もう一つは中盤の守備体系だ。ツゥートップの後ろにシャドウを3名揃えている以上、ボランチを含めた中盤の守備が重要だ。すでに足が止まりかけていたトップ下中村に代えて遠藤、稲本、中田浩のいずれかを入れて相手の攻めをつぶすこともできた。もし早めにこの交代をしていれば、ピッチ上の選手たちにとにかく何が何でもこの1点を守るぞという監督のゲームプランが簡単明瞭に伝わったはずだ。
それなのに、小野である。FWを下げて小野である。あの交代にどんな意味があったのだろう。中盤を厚くして攻撃を再構成するつもりだったのか。福西、小野のボランチにして中田、中村で攻めを行うはずだったのか。観ていると中田、小野ともに前がかりになっていて、バックラインの前にスペースが生まれていた。そこをオーストラリアのケーヒルやアロイジにつかれた感じだ。シュートシーン、遥か後方をゆっくり歩いている小野の姿を確認できた。小野、お前のポジションはそこじゃない。もっと後ろだったんだよと言いたくなった。
この4年間、ジーコの監督としての資質、あまりにも無策なゲームプラン、場当たり的な選手交代などに早め監督交代してくれないとワールドカップは悲劇に終わりかねないとぶつくさ言ってきたように思う。それを目の当たりにしちゃったというのが、今回の交代、小野であり1-3の結果だ。選手の自主性うんぬんはタレントの宝庫であるブラジルだけに通用するのだと思う。そんなブラジルでもきちんとした監督の戦術が徹底されていなとなかなか勝てない。94年はパレイラがきまえて忠実な守備的サッカーを行ったおかげである。2002年はブラジルでは普通やらない3-5-2をフェリペが徹底させたことが大きいはず。ようはどんな偉大なチームも監督の戦術眼がなければ勝ち進めないということなのだ。
ジーコの監督としての試合は多分後二試合だろう。想像もつかないような幸運によりブラジルがオーストラリアに5-0くらいで勝ち、日本がクロアチアに3-0くらいで勝ち、クロアチアがオーストラリアと引き分け、最後に日本がブラジル勝つか引き分けるみたいなことがおきたら・・・・・。
