「読み聞かせ」に細かい注文

絵本の著作権めぐり作家・出版団体
子どもを本に親しませようと図書館や幼稚園などで活発になっている絵本の「読み聞かせ」や「お話会」について、作者や出版社の団体が、著作権者への許諾の要・不要を分類したガイドラインを作成した。だが、規定は細部にわたるため、「現場を萎縮させるのではないか」という疑問の声も出ている。朝日新聞 5月13日3面

早速、書協のHP見てみた。PDFファイルで、たかだか2.5メガ程度なのだが落とすのにえらく時間がかかった。かなりアクセス集中しているとみた。
http://www.jbpa.or.jp/
作成にあたった4団体は「絵本は完成された造形。勝手な改変で、著作者が不快感をもつこともある。細かい規定は、読み聞かせる側の不安解消を狙った」というが、日本図書館協会は「分かりづらい内容で、読み聞かせは法的に問題というイメージが広がり、規制につながりかねない」との申し入れていたという。
しかし、なんでここまで細かい規定が必要なのだろう。著作権についての周知させることを目的としているのか、読み聞かせにを行う団体への便宜を図ることを目的にしているのかもわからない、曖昧なガイドラインになっている。でもなんとなく規制の図るような意図を感じさせる内容だとは思った。読み聞かせ大いにけっこう、読み聞かせによって子どもが絵本に親しむことは、著者にとっても、出版社にとっても、もっと広義でいえば、出版文化にとっても益になるみたいな発想になっていない。出版物の二次利用には著作権者、出版社の権利を侵さないように、もしくは使用料が発生しますよみたいな、ある種の狭量的権利意識がにじみ出ているような印象を持った。

●営利を目的とせず、かつ観客から料金を受けず、かつ実演・口述する人(児童書を38条朗読する人)に報酬が支払われない場合に限り無許諾で利用できる。なお、本手引きにおいては、下記で○をつけた経費に充当するために観客から料金を受ける場合について無許諾での利用を認める。ただし、経費はすべて実費程度とする。
■ 下記の場合は、著作権者に無許諾で利用できます。
本手引きにおける方針
○ 実演・口述する人への交通費の支払い、昼食・弁当の支給
× 実演・口述する人への報酬・謝金の支払い
○ 会場費、会場運営費(電気代等)
○ 観客へ配る資料費、お菓子・ジュース代
○ 主催者・ボランティア・アルバイトの交通費、昼食・弁当代
× 主催者の人件費、アルバイト代
△ その他やむを得ず観客から料金の徴収を要する経費

だいたいにおいて非営利の定義をどうしてここまで細かく規定したものをリーフレット形式のものに載せるのかとも思う。出版業界に悪しきお役所仕事の最たるもののようにも思う。それでは出版社がこんな風に厳密に出版物の二次利用にチェックを入れているのかというときわめて疑問な部分もあるのだ。例えば、学校のPTA系のお母さんたちが有志で読み聞かせを始めるとする。数冊の本をリストアップする。各出版社に読み聞かせの趣旨と本を利用することの許諾を行うみたいなことになるのか、おいおいそれは煩雑だろうとも思う。しかもたいていの出版社の場合、著作権使用の窓口などまともに儲けていないのが普通。電話対応した人間は、上司に聞いて「とりあえず、趣意書と連絡先FAXしてください」程度の対応。送られたFAXは上司の机の上。で、たぶん返事とかもしない。先方から確認の連絡があって始めてFAX穿り出して、「はい、OK」くらいが関の山だと思うのだが。
利用者へのガイドラインを作成するよりも、まずは出版社向けに詳細なガイドライン、対応マニュアルを作成してアップすべきだったんじゃないかと思う。読み聞かせに対しての著作権との兼ね合いを参照するための、まさしくガイドライン。それならば納得できる。細かくて当たり前だ。それでいて各出版社が自社での対応において勘案していくということなのだから。
今回のガイドラインの分かりづらさは利用者向けなのか、はたまた会員出版社向けなのかの区分けがうまくできないまま作成されたことにもよるのではないかとも思う。
それとは別にこうした著作権保護がある種の保守的な権利意識としてメディアの普及に制限を加えているような気がしてならないとも感じた。世の中の流れでもあるオープン・ソース、電子メディアの発達によってもはや複製技術のコストは限りなくチープな方向に向かおうとしている。そういう現在にあって、本という紙ベースの複製文化がどう対応していくべきか、あるいはその可能性はどうかといった点を考えていくときに、こうした狭量なガイドラインとかやっていていいのとも思うのだが。