リハビリを見学する

 今日は午前休をとって朝から国リハへ行く。妻のリハビリ訓練を一度見ておきたかったこと、療法士の先生方と面識をもっておきたかったため。あわせてまだ提出していなかったリハビリへの要望書と自宅の見取り図を持っていった。
 リハビリは9時からOT、11時15分からPTで、それぞれ45分。ちょっと短いかなとも思ったが、患者の負担からすると適切な時間なのかもしれないとは思った。
 道路が混んでいたので9時を若干回ってから国リハに着いたので、OTはすでに始まっていた。OT室はかなり広い長方形のスペースで、作業用の机が八つ並んでいて、患者がそれぞれの作業を行っていた。入って左側の正面は大きなガラス張り仕切られていて、その下にはパソコンが5〜6台並んでいる。ガラスを通してその奥にももう一つ作業室があるようだった。さらに逆側の奥にもう一つ部屋があり、そこには起居動作訓練用のベッドが4〜5台置かれている。さらに奥には二つのキッチン、一つは普通の家庭用のシステム・キッチン、もう一つは身障者用のやや低いものがあり、その右側には8〜10畳くらいの和室が設置されている。日常生活訓練ができるようになっているのだ。
 妻のOT訓練は、最初が腕を伸ばす訓練。次に車椅子からベッドへの移動訓練。ベッドに腰掛けて上着を使える右手だけを使って着る訓練。その後はスキル・ミニギャラリーというビーズ風の小さな玉を使ったジグゾーパズルだった。かなり細かい根をつめるような作業訓練で、たぶん注意障害のある妻のための集中力の持続を維持するためのものだろうと推測した。
 妻の担当の作業療法士の先生は男性で、あまり訓練の説明とかはしてくれなかったが、最初に見取り図等を求められたので、見せながら自宅での生活をなんとか車椅子中心ではない形でというこちらの希望を述べた。それに対しては安全面や、妻の現在の杖をついての歩行も介助を受けて数メートル程度なので、基本的には車椅子生活になるでしょうとのものだった。こちらの意向を受けてPTのスタッフとも話をしてみますという。
 OTの終了後は一度病棟に戻ったが、妻の希望で病院の庭内を散歩にでる。いつも夜とか休みの日にしかこないのだが、ウィークデイの午前中ということもあり病院にしろ訓練所にしろなかなか活気がある。いつののように陸上トラックのあたりまでいく。天気予報にもあったが4月中旬を思わせる穏やかで暖かい陽気で庭内の散歩は心地良かった。
 PTは11時からで、訓練に行く患者はエレベーター前に集まり、看護助士がつきそって集団で訓練室まで行く。妻の担当のPTの先生は、20代後半の女性ですでに面識がある。何人かの患者を受け持っているのだが、今日は家族が見学に来ているということでほとんどつっききりで妻の訓練をしてくれた。訓練をしながらも私に訓練内容や妻の状態、機能回復の度合い等についても丁寧に説明をしていただけた。この理学療法士の先生も仕事熱心な、いわゆるできるという印象をもった。総じての印象だが、国リハのスタッフについていえば、なにか女性のスタッフのほうが覇気があるなと思う。そういえば高次脳機能障害の学習会を運営しているスタッフも女性ばかりだった。
 PT訓練はまずベンチに寝そべって、介助を受けながら両足の屈伸運動から始まった。左足を動かしてごらんと先生から促されて、何回かはかすかにだが左のひざをあげてやや曲げることができた。ただし腰から足の付け根あたりに何とか力を入れて足を持ち上げるのだが、この動きと膝を曲げることの連動がうまくいっていないのが見てとれた。健常な一般人にとって自然にできるこうした一連の随意運動が妻の場合にはうまくいかない。足に信号を送る神経組織が分断されているということなのだろう。
 次は短下肢装具をつけて4点杖をついての歩行訓練。ゆっくりではあるが、そばに介助がついて脇に手を添える形でけっこう長い距離を歩くことができた。介助は軽く手を添える程度なのだが、やはり転倒の危険性があるので必要だという。そういう意味ではまだまだ自律歩行といえるような段階ではないようだ。その後、歩行の延長上で階段昇降なども短時間ではあるが行った。
 訓練の合間にこちらの要望や、自宅が狭いということもあり車椅子での全的な生活が難しいことから、つかまり立ちやつたい歩きが可能かどうかなども聞いてみた。一人で杖歩行にしろ、そうしたつたい歩きについては、やはり転倒の危険があるという。妻の場合は、片麻痺の問題だけでなく、注意障害の影響で自立歩行困難にさせている部分もあるという。左足が内反尖足気味に内側にまがった状態にきずかず歩行をしようとしての転倒などが心配だというのだ。
 それでも手術後再転院してからは状態が格段に良くなっているとのことで、このままリハビリを進めていけば希望も開けるという旨のお話もあった。
 リハビリ訓練を通してみた印象では、なんとなくだが、イメージしたとおりという感じだった。それでもこちらが思った以上に杖歩行とかが進んでいた部分などもあり、時間の都合がつけばあと1〜2回時間を作って見学を行いたいとも思った。杖よりは手摺等を使っての歩行訓練のほうが安定するとも伺った。土、日に見舞いに行った時につたい歩きの訓練を行いたいというと、短下肢装具を病棟にも貸し出してもらえることにもなった。自宅での生活についてもより安定するが装着に時間のかかる長下肢よりも短下肢のほうが実際的であるという話だった。ただしこうした装具はオーダーメイドのため数万程度かかるとのこと。4点杖はホームセンターで5〜6千円くらいで売っているともいわれた。