デニス・ウィーバー死去

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http://www.asahi.com/obituaries/update/0228/001.html
 この人といえば、訃報記事にもあるとおり、なんといっても「警部マクロード」。そしてスピルバーグの「激突」の二本。これ以外にはまったく印象がない。81歳とけっこう歳いっていたんだなという印象だ。「警部マクロード」シリーズは'70年代前半の頃だから、当時でもすでに40代後半だったということ、けっこう年齢いっていたんだな。
 それにしても「警部マクロード」はとにかく面白い警察ドラマだった。同時期にやっていた「刑事コロンボ」よりははるかに楽しめた。マッチョな西部劇の主人公が大都会ニューヨークで大活躍というシチュエーションが楽しかった。このドラマシリーズについてなにかネットでないかなと思ってくぐると、こんな素晴らしいサイトがある。
番組ガイド:「警部マクロード」: 【海外ドラマ番組ガイド☆テレプレイ】
 いや〜、懐かしい。いろいろ参考になりました。個人的には「市警本部最悪の日」「市警本部大混乱」「市警本部大攻防戦」の市警本部三部作が大好きだな。あのドタバタぶりは今でもよく覚えている。クリフォード刑事部長を演じたJ・D・キャノンも苦虫噛み潰し顔が印象に残る。そうそう紅一点フィリス巡査役をやっていたのは、あのテリー・ガーだったとは。当時からこのフィリス役の女優は気に入っていたんだけど。言われてみればお人よしの婦人警官役はまさしく彼女のキャラだね。時代的にはちょうど「ヤング・フランケンシュタイン」の頃か。
 この「警部マクロード」の痛快さは、'70年代のメイン・テーマみたいなものに対するアンチ・テーゼを感じさせる。ベトナム戦争とともに古き良きアメリカのあらゆる既存価値が崩壊した時代にあって、古典的な西部劇のヒーローが大都会に出現する。それは喜劇としてしか存在しえないということだったんだろうね。それをより明快な形で描いたのが「警部マクロード」だ。痛快アクション・コメディという形だね。同じようにニューヨークにやってきた西部劇のヒーローをより倒錯かつ屈折した形で描いたのがシュレジンジャーの「夜のカーボーイ」とでもいうことになるのかな。こちらは陰惨な印象はあるけど、基調は悲喜劇みたいなもの。
 デニス・ウィーバーにとって「警部マクロード」はほんとに当たり役ということになったんじゃないかとも思う。以後の彼はたぶん何をやってもマクロードのイメージで語られるみたいなことになったんではということだ。彼が別の役柄を演じても、「あっ、マクロード」みたいに思われる。そういう意味じゃ「激突!」で不気味なトレーラーに追われる善良なセールスマン役にしても、マクロードだからきっと最後は勝つに決まっていると思ったもの。
 個人的なエピソードだけど、ランチ・コートっていう代物をこのドラマで初めて知った。マクロードが着ていたやつね。マクロードに影響受けてか、高校時代に初めて買ったコートがランチ・コートだった。受験生の頃はずっとこのコートを着ていたっけ。メンクラも買えない貧しい高校生にとっては、ダッフルやピーコートは高嶺の花っていう感じがしたもんだよ。