雪の日に

 天気予報が見事にあたって朝から雪。
 今日も外出予定を出していたのだが、妻は勝手に昼食を外で食べることにしてしまったのでちょっと焦った。車でドライブだけだったら、スタッドはいているから大丈夫とは思っていたのだが、外食となると車から車椅子に移ることとかを考えると、かなりしんどい。
電話してきた妻に、「どうして勝手にそういうこと決めちゃうの」とちょっと声を荒らげた。
 午前中に子どもが通っている学童のバザーがあったので行ってみた。それまでは保育園=学童のイベントにはほとんど皆勤賞で参加していたのだが、妻が入院してからはたぶん初めてのことだった。たいてい土曜日にあるのだが、まずは見舞いにいかなくてはならないし、いろいろと妻のこととかを聞かれるのも、正直しんどいなとも思ってはいた。
 今回はというと、とりあえず娘の朝食をチープにあげようということ、保育園の先生方がカレーとかスパゲッティとかを作ってくれ、300円程度で食べれるのだ。娘も○○先生がスパゲッティ作ってくれるから食べたいと言っていた。1歳の時からずっと通っている保育園だから、娘はここが大好き。娘のためにも、たまには行ってみようかとも思った。
 昼過ぎに病院に行く。妻を車に乗せて病院から一番近いファミレスに行き昼食をとった。これまでにももう何回か妻を連れてファミレスには行っているけど、一番困るのは車から車椅子へ移る時だ。店内はけっこうバリアフリーっぽく車椅子での移動ができるけれど、郊外型のファミレスには身障者用の駐車スペースがないのだ。だから二列あいている駐車スペースがないと車から車椅子への乗り移りができない。うまく開いていても、すぐに隣に車が入ってきてしまうので、車椅子から車への乗り移りができない。
 車から車椅子への乗り降りには、車の横に2メートル前後のスペースがないとけっこうしんどい。だから横に車停められたらアウトなわけだ。その都度、車を少し前に出したりと苦労しなければならない。ファミレスチェーン店は最低一箇所は身障者用の駐車スペースを設けて欲しいとは思う。近所のサティなどには入り口に一番近いスペースに身障者用のスペースを設けている。スーパーに出来るのだからファミレスにも出来るだろうとも思うのだが。
 もっともこんなこと身内に身障者が出たから初めて思うことでもあるわけだ。たぶん以前の自分だったらそんなこと思いもよらなかっただろうし、なまじ駐車場がいっぱいで広い身障者スペースが開いていたら、なんだよ、みたいなこと思ったかもしれん。
 なにごとも当事者にならないと考えもつかないような不便が世の中に蔓延しているんだなと痛感した。
 昼食後はドライブ。けっこう雪が積もりだしたので、道はそこそこ空いていた。ノーマルはいている車はみんな恐る恐るのノロノロ運転。うんうん、気持ちはわかるよ。こっちはスタッドバリバリだから、まあ普通に走って、止まる時はABSきかせまくっていた。4時半頃に病院に戻ってから、病院の庭を少しだけ散歩した。雪はもうその時分にはほとんど止んでいた。雪の積もった歩道を少しだけ、妻の車椅子を押して歩いた。積もった雪の中に車椅子の二本の轍が幾つかあり、ほんの数メートルいったあたりで引き返した後が残っている。何人かの患者さんがちょっとだけ雪の中に出てみたのだろう。
 そんな歩道を数百メートル妻を押して歩いた。娘は遠くで雪に戯れていた。ちょっと歌のようなものがひねりでた。本当に歌のようなもの、それだけでしかない。

 病院の 歩道に つもりし 白雪に
         くねくねと続く 車椅子の轍

 降り積もる 雪に残りし ふた筋の
         轍によりそう 一人の足跡