妻の状況(1/9)

 1時過ぎに妻を見舞う。妻は待ちかねたかのようにエレベータ前で車椅子に乗って待っていた。これも最近のパターン化された行動だ。1時から4時までの外出を申請していたので、さっそく準備してから車に乗せる。発症前はあまりドライブとか好きなタイプではなかったが、病院で退屈しまくっているためか車に乗って病院外に出るのが大好きになっている。
 今日は秋ケ瀬の公園に行った。ここは桜の名所だけど、特に遊具とかがあるわけでもない、ただの河川敷の公園だ。野球のグランドや広い広場はあるけど、ただそれだけの場所だ。小春日和っぽい比較的暖かな午後だったので、車椅子に乗せて散歩した。娘は例によって一輪車で車椅子の前を後ろをつかず離れずしていた。妻の病いがなければ、本当に家族三人の和気藹々という風情でもあるのだが。
 妻はというと、注意障害の影響なのだろうか、どんどん幼女化しつつあるというのが最近の印象でもある。頻繁に電話してくるのもそうだし、とにかく自分の思いだけを率直に口にする。相手の事情など考慮する部分がさらさらない。明日は仕事遅くなるから行けないと何度も言っても、「それでも来てね、待っているから」の一転ばりだ。日記までいかないにしろ、頻繁にメモを取るようにと渡したノートには、時々思い出したように「寂しいよ〜」という記述が綴られるだけだ。後はやれお茶がぬるいだの、リハビリがきついだのといったクレーマーめいた言葉だけ。この注意障害、集中力の欠如、その他もろもろがリハビリが遅々として進まない要因でもあるのだとは思う。
 医師や看護師、リハビリのセラピストたちも、妻のそういう注意障害の部分が分かっているだけに、妻がリハビリによって飛躍的に回復するという期待をあまり持っていないような印象がある。家族の私たちも、時間をかけてゆっくりと焦らず、みたいな物言いをされるが、そこにはなんとなくあまり多大な期待をしても駄目だよ、みたいな部分が透けて見えさえする。こっちの側の考えすぎなのかもしれないけれども。