はじめての外出

 今日は妻を初めて外出させた。とはいっても病院の外周を一周半しただけだったけど。病院には一応、1時から4時までの予定で外出届けを出していたのだが、病棟を出たのが1時35分くらいのこと。外は風が少し強くて冷たい。街路樹の落ち葉が木枯らしに舞っている。妻の首にぶら下げて涎ふき用のミニタオルが風で顔に何回もかぶさってくる。日陰ではちょっと病人にはしんどい寒さだ。風がふいに止んで日向に出ると一変して穏やかな陽光がふりそそぐ。
 病院の外周を約一時間かけて車椅子を押して歩いた。国立リハビリセンターは広大な米軍の通信基地に隣接している。周辺は街路樹が整備されていて歩道も広く、なかなか雰囲気のある場所だ。これで米軍基地がなければ、この辺はもっと発展するんだろうなとも思う。米軍基地によって街が寸断されている。道路も基地に沿って周回しているので、かなりの遠回りをしいられているからだ。
 街路樹に沿って歩いてから近くのコンビニに入って正月用のテレビガイドとコミックを購入、妻にとっては入院以来初めてのコンビニだ。それからファミレスに入って三人で食事をとった。私と娘は昼食、妻にはケーキとホットミルク。妻にとっては久々のケーキなんだが、妻の好みの生クリームたっぷり系のものがなかったのでチョコシフォンを注文したのだが、妻は半分くらい食べてやめてしまった。じゃあ残り食べちゃうよといって皿をとるとやっぱり食べるといい出す。このへんにも注意力散漫な部分が出ているのだろうか。
 病院内の食堂を別にすれば入院以来初めての家族三人での外食だ。ただし時間が限られていたし、妻の食べこぼしも気になっていたので、なんだか慌しかった。妻が入院している間はこうした機会も増えてくるのだろう。もう一人大人がいれば妻を車に乗せてもう少し遠出をすることも可能かもしれないなとも思った。問題は妻のトイレだ。外ではなかなか身障者用のトイレも整備されていないし、こっちもトイレの介助は不慣れだから。汚したときの替えの衣類やら紙オムツの予備とかも用意していかなくてはならないのかとも思う。
 この日はインフルエンザの予防接種もあり5時頃に病院を出た。7時前に妻が携帯に電話してきて「寂しい、寂しい」を連発していた。彼女の病状では人恋しさが募るのだろうな。
 8時頃に長野に住んでいる弟夫婦が来た。二日間泊まって妻の見舞いをしてくれる。すき焼きを作ってもてなした。