耐震偽装について

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20051217i105.htm
 ここんとこニュースネタはこれに尽きるってところだな。姉葉建築士ヒューザーの小嶋社長、総研の内河所長とか、登場人物もなかなか濃い人たちばかりだ。たぶんニュースショーやワイドショーはこれ一色なんだろうね。しかし耐震偽装というこの問題、これだけマンションとかが安くなれば、誰でも考えることではあったんだろうと思う。不況下でのデフレの中で価格破壊、コストダウンという風潮だ。ちょっと考えれば誰でも考えそうだよ。鉄筋コンクリのハコ物の鉄筋の数を間引くとかっていうのは。でも誰でも考えそうだけど、実際にそれをやるとなると話は違ってくるな。鉄筋間引いて、安いマンションやホテルを作る。その結果、震度5程度で倒壊の恐れのあるきわめて危険な欠陥品を作り出す。結果を考えれば、またその影響を考えれば普通やらないよな、そういうことって。薄っぺらな言葉だけどモラル・ハザードっていうことなんだろう。
 この事件で注目したというか、笑えたのが民間検査機関という会社の存在だ。株主が住宅メーカーや住宅機器メーカーだって。これで公正な検査はあり得ないだろう。住宅メーカーが出資した検査機関が大株主の作った箱モノの検査にあたってきちんと不備を指摘できるかどうか。常識的に考えたってそんなことはあり得ないだろう。普通は民間委託の検査でも公正度を保つならば出資者、株主に制限を与えるぐらいのことするんじゃないかと思わざるを得ない。
 かといって、検査機関はすべて公的機関が行うべきだとも実はいえない。役所と企業の癒着はそれこそ誇大に言っちゃえば有史以来ずっと続いてきているようなもんだ。しかもお役所仕事だとおよそ無責任、非効率だから仕事はかどらない。マンション一棟の検査にそれこそ一年以上かかったりする可能性もあるだろうしね。だいたい検査要員の不足で、こうした民間検査機関の担当者もたいていは自治体職員の転職組だというじゃないか。それに自治体が検査してすり抜けた建物もけっこうあるという話もある。
 もう一度言うけど、結局こういうのもモラル・ハザードっていうことなんだろうか。いやそれ以上にね、あえて言わせてもらっちゃえば市場原理にモラルなんて所詮働かないんじゃないのかなということ。民間活力導入、市場原理にもとずいて効率的、合理的に様々な事業を行う。いいことだよ、でもね市場原理っていうのは弱肉強食の世界、実はなんでもありの世界なんだ。そこにやれ公平性だの公正だの、正義だのを求めるのが端から間違っているんだということ。
 偽装マンションを購入した人たちへの同情とか、救済のために公的資金投入とかいろいろ話が出てきているけど、結局ねしらっと言っちゃえば「安物買いの銭失い」とうことでしきゃないんだよ。そりゃ数千万の買い物したんだし、本人たちにとっては深刻な問題だ。でもね市場原理の中ではおよそそういうこともあるっていうことだ。住友のガーデンヒルズとか買ってれば、こういうことは起きないんだろうから。
 前にもどこかで言及したけど、市場原理に基づいても「神の手」が働いて、合理的な結果が得られるなんてことは実はないんだとつくづく思う。人間は欲望に基づいて生きているんだから。なんかここんとこの世の中の動きを見ていると、つくづく”マルクス再臨”を考えてしまうな。人間の欲求原理、欲望を制限して公正な社会を実現する。多少の暮らしにくさ、生きづらさはあるとしてもだ。