たまごっち

 小学二年生の娘にせがまれてバンダイの新しい「たまごっち」を欲していたのだが、なかなか手に入らんのである。今さらこんな話題をとも思うが、それはそれオヤジだからしょうがないね。一番近いトイザラスで聞いたみたところ、現在のところ入荷予定なし。また入荷しても開店前から並ばないと購入できません、とのこと。おいおい、そんなに人気なのか!
 で、ふと周りを見渡すと、確かに目にするチビガキ共(小学生ばっかりやな)が一つ二つとストラップつけて持ち歩いているではないかい。これはひょっとして私の知らないところでとってもすごい一大ブームが起きているのか。
 アマゾンのサイトとかくぐると、ユーズドしか現品流通していない状態。しかもメーカー希望価格2625円のところが軒並み4000〜5000円。最高値は裏パスワード付とかで9800円とかもあるではないか。
バンダイちょっとこい」
 おじさんが商売の仕方教えてやるって感じだな。意図的に品薄作っているのか、単に生産が追いつかないのか、だったらガンダムだのプリキュラだののライン止めてがんがん作れといいたい。どこの世界におもちゃ一つに通常小売価格の二倍、三倍の値段がついて中古品が流通しとるんだって感じだね。
 とかなんとかブーたれつつも結局、アマゾンのユーズドで最安値の3200円で「祝ケータイかいツー!たまごっちプラス おれんじジュース」を購入、本日現品が届きました。娘の喜んだ顔がきらきらして、まさしく親ばか冥利につきてしまったのではあるが、それにしてもお店で売っている以上の金出していることに妙に納得がいかないというか、なんというか。
 でも考えてみると、これぞまさしく資本主義の原点なんだよな。価格は需要と供給のバランスで決定されるわけだから、需要ががんがんある時には供給側はどんどん価格をつりあげられる。だからこそバンダイ、きちんと商売してね〜んじゃないのとも思うわけだね。品薄状態あおるよりも若干値段高めだろうがどんどん増産に努めればいいじゃないとか、この際おまけつけて抱き合わせで値段つりあげて売ればとか、まあ勝手に思うわけだ。
 さらにいえば、自分がずっとお仕事についている本の業界についていうと、ここは定価商売が業界全体に骨の髄まで染み付いているから、こういう需要と供給の鬩ぎあいで価格が決定されるというのがまったく無縁なわけなんだよな。どんなに売れ行きの良いベストセラー、ミリオンセラーだって全国一律価格だし、ゴミにもクソにもならないような出版物でも定価販売だ。
 本は文化財だから、そこらのおもちゃと一緒くたには出来ない、だからこその法定再販商品である、とはまあもっともらしく聞こえる正論といや正論ではあるけど、この業界にいついてみれば、それが恐ろしくウソっぽい言説であることは一目瞭然であることうけあいなしなのではあるわけだ。だってたいていの出版社にとって出版物は金券同然であり、とりあえずがんがん出版して取次に収めればお金になるという図式だ。で、取次はそれをがんがん本屋に流す。本屋、そんな売れるかどうかわからないものを店頭において代金払う金なないから、入荷すればトコロテン式に前に入ってきた本を返品して相殺する。と、そんな風にして本が金券代わりに流通しているというのが、法定再販制度下の委託販売制なわけよ。少々荒っぽい記述だけど、まあ大はずれということではないな。
 すると、取次は返ってきた本を滞貨させることなく出版社に返品する。返品されると売上減るから出版社はそれ以上にまた本を作って取次に出荷する。もうほとんど際限ない自転車操業の悪循環なわけ。でありつつ一方で本は文化財だから、多品種少量販売だからとかたくなに定価販売、法定再販制を護持しているわけだ。
 もう、どこでもいいよ。出版社の皆さん、5年、10年に一度でいいから「たまごっち」みたいなヒット商品作ろうよ。でさあ、アマゾンでも定価じゃ全然変えなくて、ユーズドで2000円が4000円、5000円で流通するみたいなことになったらすごいよね。とはいえ、もはや本というソフトにそんなものを期待してもせんないことなのかもしれないな〜。