小泉政権の功罪

 いったいぜんたい小泉政権はこの4年間なにをしてきた。「聖域なき構造改革」だのなんだのとスローガンはあまたあるけど、実際の成果として現われた改革ってなんだったんだろう。この4年間で景気は、失業率は、あるいは外交は、どう変わった。マスコミからし小泉政権のスローガンこそ大きく取り上げるけれど、4年間の功罪を精査するものは一つもないような気がする。
 小泉首相郵政民営化こそ改革の本丸だとして、今度の選挙は望み1年後には退陣することも表明している。この政権は4年間をかけて郵政民営化だけをやってきたのか、そしてそれが達成されれば構造改革とかいう代物はすべて解決するんだろうか。このへんはもう疑問を通り越していると思うんだが。
 もともと小泉という人は、それほど定見のある政治家ではないと思う。外交については対米追随のみ。「ブッシュのポチ」とはよく言ったよね、とさえ思う。日本の外交戦略がアメリカを機軸にするのは、戦後史の流れの中ではいたし方ない。しかし、今の東アジアの情勢化での日本の地政学的位置付けは、アメリカとの同盟関係を維持しつつ、いかに中国、韓国、東南アジア諸国とバランスをとっていくかということじゃないのかな。そういう意味では従来通りのアメリカ中心の外交とは異なる視座からの政策を構築していくべきだったんだが、小泉氏にはそうした定見はまったくない。外にはアメリカ命的な発言、内では靖国に代表されるような伝統的なナショナリズムへの回帰。このへんはある意味、真性守旧派的感覚だと思うのだが。
 郵政民営化が改革の本丸とされるけど、民営化、市場主義の導入にそれほどの期待をもてるのかどうか。民間の金融機関が不良債権作りまくって、あげくに数兆円の公的資金が投入されたのはつい最近の出来事だったんじゃないか。市場の合理的な流れに沿っていけば予定調和的にうまくやっていけるなんて嘘っぱち。歴史の検証がなされていなさすぎるよ。
 小泉政権の経済政策のキーワードは、小さな政府、規制緩和、市場主義といったところか。モデルにしているのはレーガン以来のアメリカ経済なのかもしれない。一見好調に見えるアメリカだけど、社会的にみればものすごい貧富の格差が増大していないか。もともとあの国は、中産階級以上とそれ以外の低所得層の格差がありすぎる国だった。それを自由主義、機会均等、個人主義といったスローガンで覆い隠していたようなところもある。現在でも黒人、ヒスパニアン、プワホワイト、低所得層に社会的矛盾のすべてが集約されているような国だし、暮らしやすさ、安全性、その他もろもろの問題が露呈している。それでもまたかの国が様々な意味で魅力を持っていることも事実ではあるけどね。
 小泉政権が目指す構造改革は多分に富める者はより富み、貧しき者はより貧しくみたいな方向にいくんじゃないかという気がする。
 ある意味、小泉政権下で一番構造改革が進んだのは自民党という政党だったと思う。それまでの派閥支配とかはほとんど形骸化された。こんどの自民党内の郵政民営化をめぐる攻防もまさにそれだ。しかしそれは小選挙区制をとった結果でもあるわけだよね。かっての中選挙区制では同じ自民党の異なる派閥の候補が同じ選挙区で戦った。しかし小選挙区制では、選挙以前に候補を決める段階での調整が総てだし、党執行部の権力が増すのは必然でもあるわけだ。よって派閥はほとんどその存在意義がなくなってきたし、派閥の長による長老政治はなくなった。
 しかし、それとは別に自民党という政党は、超がつく右翼から中道左派まで、改憲派民族派から護憲派まで、幅広い政治家がいて、その時々に交互にバランスをとりあって政権党を形成してきていた。だからこそ国民の圧倒的支持を得てきていた部分もあるわけだ。それが小選挙区導入後の10年、派閥の形骸化とともにその多様性がだんだん失われてきつつある。それにとどめを刺したのがのが小泉総裁ともいえる。「自民党をぶっつぶす」と叫んで党首に選ばれた小泉純一郎はみごとに自民党をぶっ潰し、ワンアイテム・イシューの政党に変質させていったとも言える。
 かっての自民党的な色彩は今では民主党のほうが濃いようにさえ思える。民族主義的な超右翼から、自民党田中派の一部、労組に支援された社会党、民社主党系まで。民主党は烏合の集だから、信用できないって。かっての自民党はもっと多種再々だったような気がするんだけどな。
 まあ今度の選挙では、またまた小泉自民党=公明党が勝利するんだろうな。でもね、今の政治状況では小泉政権はあまりに無策だ。民主党が勝って政権交代があったほうが良いと私は考える。二大政党による政権交代こそが、よりましな、より妥当な政治への第一歩だと思う。もっとも民主党が勝てば、またま十年前の再現よろしく政界再編っていうことになるんだろうけど。