村上春樹『東京奇譚集』が出る

 村上春樹の新作短編集がいよいよ9月15日に出るという。「新潮」に連載していたやつだな。早速アマゾンで予約した。楽しみではある。5月号に掲載された「どこであれそれが見つかりそうな場所で」は読んだはずだが、中身を失念している。印象が薄いんだな〜。
 村上春樹の短編集は、長編とは別の意味での魅力がある。『中国行きのスローボート』『蛍・納屋を焼く』『パン屋再襲撃』『レキシントンの幽霊』とみんなお気に入りだ。そして個人的には短編集の最高傑作だと思っている『神の子どもたちはみな踊る』。阪神大震災にインスパイアされた村上春樹の意識の流れが凝縮されているような精密で凝縮された連作小説だ。寓意的な作品群の中でなぜかとてもストレートな意志の表明みたいに感じられた「蜂蜜パイ」が好きだな。
 こんどの短編集は『神の子〜』を越えるようなものになるのかな。なんとなく『アフターダーク』の延長上で『レキシントン〜』みたいにものが提示されるのかなという気もするけど。
 そういえば長編ものは『カフカ』が最後だな。『アフターダーク』は『国境の東 太陽の西』や『スプートニクの恋人』と同様、中編小説的位置付けだったから。これも個人的な感想でしかないけど最高傑作『ねじまき鳥クロニカル』を越える内容のものを読みたいなと切に思う。あの長編が出た後、村上春樹は現実への現実へのコミットメントを問題意識にした。その成果は一連のオウムものになったりもした。そのうえでどんな長編が出てくるんだろうと思っているのだが、実際には『ねじまき鳥』のある種の側面でもあるホラー的色彩の濃いものの延長上みたいな気もするわけ。『カフカ』とかもね。だもんでもう少し読み応えのあるものが読みたいなとも思う。まあこれはある種のないものねだりかな。
 とりあえず出版されたものはすべて読むわけだし、そしてたいていは満足しているわけなので今度の短編集も期待してはいる。