『下妻物語』を観る

 遅きに失するネタだがレンタルDVDで観ました。
 深田恭子のアイドルものみたいな先入観があったのだが、この映画素晴らしい出来です。とにかくドライブ感のある、第一級の青春映画という感じ。
 我が個人的な見解ですが、良き青春映画には二大鉄則があります。
 一.セックス・シーンがないこと
 二.人が死なないこと
 ほとんど完璧に『風の歌を聴け』の引用=受け売りでもあるけど、放って置いても人は死ぬし、女と寝る。そしてこの二つはきわめてイージーカタルシスを与えてくれる。でも大人の時間ではない青春っていうのは、そうしたしがらみ的なものから解放されているきわめて不明朗な時間の中にあるんじゃないかと思うわけ。そして少年も少女もどこか中性的な存在であり続ける。それが青春みたいに思うわけ。
 で、この映画はまさしく、それっていう感じだな。主人公の二人の少女、ロリータファッションに身を包んだ深田恭子とレディース、ツッパリの土屋アンナ。まったく正反対ながら、時代、あるいは環境から逸脱した強烈なキャラクターとか、茨城の地方性といったシチュエーションとかを全部捨象すれば、二人の女の子のピュアな友情物語でもあるわけなのだが、これがなんていうんだろう全然臭くなくウェット感のない、妙にカラットしたところがあっていいわけ。カリフォルニアの青い空にも似た茨城の青い空や田園ならぬ田圃の続く背景とともにとにかくこのカラっと感がすばらしい。
 主役二人も特異なキャラを見事に演じきっている。深田恭子、とにかく薄っぺらく、不鮮明なヒラヒラ自己中心的少女が逆にすごい存在感を与えてくれる。土屋アンナ、このつっぱりキャラはかなり得している部分あるけど、抜群の存在感。聞けばカリスマ的モデルで、すでに結婚、一児のママとか。でもこの娘はこの若さでこの顔の表情、タレントだな。普通だったらこの役どころだと彼女がおいしいところをぜんぶかっさらっていっちゃうくらいの存在感なのに、けっこううまく深田恭子との棲み分けができている。そのへんを考えると深田恭子恐るべしみたいに、土屋アンナが輝けば輝くほど、深田恭子の底の知れないタレント性も浮かび上がってくるみたいにも思った。
 深田恭子のほとんど出ずっぱりカットの中で彼女のモノローグみたいなナレーションが狂言回しになって進んでいくストーリーは、演出のさえ、脚本の勝利みたいな部分もある。なんかメタストーリーみたいな感じもするな、このモノローグは。
 こうゆう映画を観ると、最近の日本映画もあなどれないな〜と、妙に嬉しくもなってくる。ちょっと幸せな一日でもあったわけで。
下妻物語 スタンダード・エディション [DVD]