サブー『パロ・コンガ』

 ブルーノート1500番台唯一の非ジャズのアルバム。それが1561番『パロ・コンガ』だ。コンガ奏者サブーのリーダー・アルバムだ。キューバ音楽の至宝、後にサルサのゴッド・ファーザーと呼ばれるアンセニオ・ロドリゲス等が参加しているが、はっきいってこのアルバムの真のリーダーは明らかにアンセニオ・ロドリゲスだ。『サムシング・エルス』のマイルスみたいなもんだよと思う。
 このアルバムの白眉は6曲目「素晴らしき幻想(南京豆売り)」だ。アンセニオ・ロドリゲスのトレス(キューバの複弦楽器)をメインにフィーチャーしたナンバーだ。このトレスのインプロビーゼーションがすごい。ちょっとぶっ飛びものだ。コンガを主体にしたアップテンポのリズム隊をバックにアコースティック・ギターに似た音色のトレスがはじけている。ラテン系フュージョンを先取りしている。1957年という時代にだ。
 この演奏を聴いて、ある意味サンタナのルーツがここにあったんだと確認した。サンタナにしろ、あるいはフュージョン系のギタリスト達、彼らが’70年代にはじめたラテン=サンバのリズムを取り入れた音楽ははるか20年近く前にその完成型があったということだ。
 実際、アンセニオ・ロドリゲスのトレスの演奏をそのままエレキ・ギターに置き換えればソフィスティートする前のサンタナになると思う。しかしつくづくこのトレスのアドリブはすごい。
パロ・コンゴ