追憶のシュガーベイブ

SONGS 大貫妙子の曲が聞きたくて、久方ぶりにこのアルバムをかけてみた。
 伝説のグループ、シュガーベイブのたった一枚のアルバムだ。どうだいLPレコードだぜ。しかし、久々に聴くというのに名曲ぞろいに、つい聴き入ってしまう。『SHOW』『DOWN TOWN』はこのアルバムが初出だったんだね。今聴いてものちっとも古びていないという印象だ。アレンジはとくにストリングスとかはちょっと古めかしい部分はある。でもそれ以外は全然問題ではないと思うよ。これがデビューアルバムだなんてちょっと信じられないな。1975年のことだから、ちょうど30年前のことだ。このグループの、そして中心メンバーの山下達郎の音楽性が、ある意味時代を超越していたということなんだろうな。
 シュガーベイブは1973年結成、ハッピーエンドの解散コンサートでデビューし、この1枚のアルバムを残して1976年に解散している。商業的にはまったく成功しなかったんじゃないかな。彼らの音楽を受容するほど時代は成熟してなかったということ。解散後ソロ活動を開始した達郎だって、1980年の『Ride on time』の成功までは、ほんと知る人ぞ知る存在だったんから。

 5曲で達郎がメインボーカルをつとめていて、大貫妙子が3曲。二人のデュエットが「すてきなメロディー」の1曲。ギターの村松邦男がご愛嬌で『ためいきばかり』のソロをとっている。ビートルズでいえばリンゴみたいな存在だな。そんな構成をみているとシュガーベイブが達郎と大貫妙子という二大タレントを有する双頭バンド的な部分を持っていたことがわかる。プロデューサーは大滝詠一山下達郎。総てのアレンジを達郎が担当している。当時の山下達郎大滝詠一のナイアガラレーベルに属していたわけだから、大滝の影響下にあったことはまちがいないことだろう。でもこのアルバムあらゆる意味で達郎色が全面にでていると思う。
 達郎は'50年代〜'60年代のアメリカンポップス、リズム&ブルースをベースにしていると聞いたことがある。そのうえでビーチボーイズとかのサウンドを取り込んだりしている。彼のポップ・ミュージックに対する造詣の深さ、博覧強記ぶりは彼のラジオ番組とかでもつとに有名だけど、このアルバムにも彼のアメリカンポップスに対する思い入れやアイデアがコラージュにようにちりばめられているような気がする。
 私がシュガーベイブを最初に聞いたのはいつ頃のことだろう。確か深夜放送、林美雄のパックインか馬場こずえの深夜営業のどっちかだろうな。深夜の3時過ぎにイヤホンを通じて聴いたんじゃないかな。たぶんアルバム1曲目の『Show』を聴いて心を躍らせた記憶がある。その時ダビングしたテープを20年近く持っていたはずだが、もう遠い記憶と一緒に、物置のどこか奥のほうにしまいこまれてしまった。もう出てこないかもしれないし、見つけてももはや聴けるような代物じゃないだろうな。
 同じ頃にやはり深夜放送で大貫妙子の『蜃気楼の街』を聞いた。布団の中で、あるいは受験勉強で机に向かっていた時か、この曲を耳にしてそれがずっと残った。その時は大貫妙子という名も知らなかったような気がする。彼女の名とこのタイトルを知ったのはだいぶ後になってからだったような気がする。そう、そして大貫妙子だ。